2023年09月06日

とことんカラス 文一総合出版

文一総合出版から標記書籍をいただきました。ありがとうございました。

F5TT-2RakAASWse.jpg

とことんカラス BIRDER編集部編
文一総合出版 ¥1980

松原さんや柴田さんなどカラスの研究者やカラス好きの人が執筆していて,清水さんの街のカラスの写真は素晴らしいです。
バードリサーチも,声の音源の提供で協力しています。

書店で見かけたら,見てみてください。

posted by ばーりさ at 09:20| 書籍紹介

2023年09月05日

最近ゴジュウカラは早くさえずりを止める

 バードリサーチでは,環境省のモニタリングサイト1000調査と連携して,北海道の3か所の演習林に協力をいただき,ICレコーダを設置して鳥のさえずり時期の調査をしています。

 毎年この時期は,7月に回収したICレコーダの聴き取り作業をしているのですが,その聞き取りが終わったので,これまでの結果をまとめてみました。ちょっと興味深かったのが,最近,ゴジュウカラのさえずりが不活発になる時期が早くなっていることです。

名称未設定-1.png

 図の赤い線が今年のさえずり頻度の季節変化で,オレンジが2022年,ピンクが2021年…と色のついているのが最近の記録で,灰色が2017年以前の結果ですが,雨龍はそれほど顕著ではありませんが,色のついた線が早くからさえずり頻度が低調になり,灰色の線が高く推移しているのがわかります。つまり最近は早い時期からゴジュウカラのさえずりが不活発になることがわかります。

 それが影響して,4/26-30,5/1-5,…のように期間別にさえずり頻度の年変動を見ると,早い季節では,以前も最近もさえずり頻度に違いがない(―印)のに対して,遅い季節には,年々さえずり頻度が減少している傾向にありました。
 活発にさえずる早い季節(4/26-30)に減少傾向はなかったので,おそらくゴジュウカラの生息数に大きな変化はないのだと考えられます。しかし,気温などの影響で,近年は早い季節にさえずりが不活発になる傾向があり,その結果として,遅い季節にはゴジュウカラのさえずり頻度が経年的に減少しているような傾向になっているのだと思います。

2.png

 こうしたことは,モニタリングサイト1000の現地調査の結果にも影響しているかもしれません。現地調査では,さえずり頻度ではなく,1回でも鳴いたら1羽と記録されますし,何回鳴いても同じ個体だと認識したら1羽と記録されるので,影響はマイルドになっていると思いますが,鳴き声での記録が多いので,それでも(本当の生息数は変わっていなくても)記録上,数が減ったように見えてしまう可能性もあり,今後の現地調査の結果の評価でも気に留めつつ,引き続き情報収集をしていきたいと思います。

posted by ばーりさ at 14:37| 活動報告

2023年08月24日

日本野鳥の会島根県支部で講演をしました

8月19日(土)に、日本野鳥の会島根県支部の室内探鳥会で、『NPO法人バードリサーチの活動〜データで守る野鳥〜』としてzoomをつかって講演をしました。
0819-1.jpg
バードリサーチで行っている季節前線、モニタリングサイト1000、ホシガラスやイワヒバリの調査、食性データベースの紹介や、それらの調査でわかってきたこと、データの活用事例をお話しした他、野鳥データベースField Noteでできることや使い方の説明、TORI quizなどの紹介をしました。特に、色々な調査で収集しているデータの管理について聞きたいと事前にお話がありましたので、それに関連する内容を盛り込みました。
0819-3.jpg

島根には調査や観光で何度も訪れたことがあるので、そこでとった観察記録の紹介もしました。下図は食性データベースに寄せられた情報です。島根県からは14件の記録が来ています。島根県内の真ん中にある点は私が三瓶山で調査をしたときに観察したクロツグミの記録。
食性データベース記録状況_島根.png

会場からのご質問もたくさんいただき、ありがたかったです。

講師として声をかけてくださった日本野鳥の会島根県支部の皆様、ありがとうございました!
posted by ばーりさ at 12:20| 活動報告

群れが複数ある山のイワヒバリ調査1日目(高木)

先日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳にてイワヒバリの調査をしてきました。予定よりも随分コースが西にずれてゆっくり緯度してくる台風の通過を待って、日程を調整しましたが、初日は台風に引きつられて寄せてきた雨雲の洗礼を受ける羽目に。
登っている時は小雨でしたが、これは織り込み済み。しっかりと雨具装備を整えて上を目指しました。調査地に着いた時には雨雲も切れて狙い通り。さっそく、山小屋の裏手で2羽のイワヒバリを確認して幸先の良いスタートです。

山小屋裏手のイワヒバリ.JPG
矢印の先にイワヒバリが1羽。

山頂付近で休息しながらイワヒバリを探していると、ライチョウの親子が顔を出してくれました。近くには夜の天敵からヒナたちを守るための保護ケージが設置されていましたので、昨晩はそこに入っていたのかな?などと考えながら見守りました。

ライチョウ用保護ケージ.JPG
ライチョウ親子のための保護ケージ

すると、カヤクグリの声の合間に、イワヒバリらしい声が遠くから一声聞こえました。最初に出会ったのとはおそらく別の群れのはず。声の方向が見渡せる場所に移りましたが、姿は見えず。歩みを進めると、裸地の割合が減ってハイマツが優勢になってきます。耳を澄ましても聞こえてくるのは、ホシガラスのしゃがれ声。時期のせいかやけに賑やかに鳴いていました。ホシガラスたちは、転々とハイマツの間を移動していて、なかなか球果にありつけていないご様子。

ホシガラス木曽駒ヶ岳202308-side.JPG
ホシガラス(左)と、数少ないハイマツの球果。写真の範囲では、うまく成熟していない1個しかなかった。

午後になると雨が再び降り始めましたが、気にもせず調査を続けました。やむかなと期待していたのですが、途中から本降りになってしまい調査できる状況ではなくなったので切り上げることに。その頃には、もう登山者は周りにほとんどおらず、すれ違った一人とずぶ濡れになりながらしばらく立ち話をして別れました。この日は設備のそろっている山小屋に泊まりましたが、悲しいことに登山靴の防水が賞味期限切れ?でしっかり浸透してきてしまっていて、靴下がびしょびしょ。ん〜。まだ十分使えるんだけど、買い替えないといけないのかなぁ。。
ところで、ふもとの駒ヶ根にはソースかつ丼があります。立ち寄ったお店でたらふく食べました。美味しかったですが、量にびっくりしました(笑)

駒ヶ根かつ丼.JPG


この調査は、バードリサーチ調査研究支援プロジェクト2022年度のバードリサーチからの調査研究プランとして実施しています。
また、株式会社モンベルより、寄付つきTシャツサポートカードによるご支援もいただいています。

posted by ばーりさ at 11:38| 研究支援(近況報告)

2023年08月23日

世界を翔ける翼−渡り鳥の壮大な旅− 化学同人 税別3,800円

科学同人社から渡り鳥についての訳書を寄贈いただきました。

世界を翔ける翼.JPG

スコット・ワイデンソール著『世界をかける翼−渡り鳥の壮大な旅−』
樋口広芳 監訳、岩崎晋也 訳 化学同人社刊 3,800円+税


翻訳を監修された樋口広芳さんが巻末に寄せている解説に書かれていますが、著者自身が経験したことに基づいて書かれているのでその内容に迫力があります。鳥たちの渡りの渡り経路や行動、生態や生理などを、さまざまな文献にもとづく最新の知見を盛り込んでまとめられているだけでなく、渡り鳥たちが窮地に陥っている現状や、その保全に取り組む活動まで途切れずに読める本です。

posted by ばーりさ at 11:45| 書籍紹介