2023年09月29日

シギ・チドリ類の秋の渡りが不調(守屋)

シギ・チドリ類の全国調査の事務局をバードリサーチは担当しています。
今年の秋はどうも例年と様子が異なり、経験がないほどシギ・チドリが観察できていません。
多くの調査関係者が心配している状況です。

199w-2022S_シギチドリ増減傾向.jpg
これは去年の夏ごろ作成した資料です。
全国調査で確認されるトウネン個体数の推計を表したもので、2000年から2022年春までの結果を示してます。
今計算したら、2022年秋は前年の60%程度で、5000羽を切っていました。
秋の代表的な旅鳥のトウネンは、変動しながら減少傾向が続いていましたが、手ごたえの良くない今秋は、さらにどうなってしまうのか。

時期がずれているだけならよいのですが、渡りに大きな変化があったのか?
今年の異常な猛暑も影響があったのかもしれません。続きを読む
posted by ばーりさ at 17:42| 活動報告

セキレイ類は3種とも動物食

駅前のコンクリート三面張りの水路でセグロセキレイが採餌しているのを観察しました。手持ちのカメラで最大にズームして、餌をとる瞬間を撮影してみましたが、黒くて小さい丸いものをつまんでいることはわかるものの、それが何なのかは全然わかりませんでした。時間があるときなら水路に入って何がいるのか見てみようかなという気が起こるかもしれませんが、新幹線に乗る前だったのでそこまでは余裕がなく、「不明」のものを食べていた、として食性データベース用に記録しました。

食性データベースにはセキレイ類の投稿もたくさんきているので、これまでに寄せられたセキレイ類の採餌記録を見てみました。これまでの記録では、ほとんどが動物食の記録です。先行研究でも、セキレイ類はかなり動物食の傾向が強いようです。
セキレイ類採餌記録.png

セグロセキレイ3.JPG

キセキレイで1件あった植物の記録は「凍った池の水面を歩き、散らばったイヌシデなどのタネをついばむ」というもの。また、この図には入れていませんが、ハクセキレイで1件だけ加工食品の採餌記録がありました。落ちていた唐揚げをついばんでいたそうです。「不明」となっている記録は全てが「嘴の長さより小さい」ものでした。
餌の大きさについてみてみると、こちらも3種ともはっきりした違いはありませんが、ハクセキレイは「嘴の長さより小さい」ものを食べた記録が全体の50%で他の2種よりも高いことがわかりました。

セキレイ類食性_大きさ分布.png

セグロセキレイ1.JPG

分からなかったという記録も動物だった植物だったという記録と同じく貴重な記録なので、ぜひ登録してください!食べ物が不明でも、餌取りをしていた場所のデータなどとして使えます。今回は、3種のセキレイ類がどのような場所で餌を食べるのか、場所のデータを使った解析もしてみました。どのくらい多様な場所で採餌をしているかについて調べてみたところ、ハクセキレイが他の2種と比べると多様な環境を使っているという傾向がありました。まだまだ記録が少ないので、もう少し記録が増えたら改めて調べてみようと思います。

セグロセキレイ2.jpg

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posted by ばーりさ at 16:16| 活動報告

2023年09月25日

イソヒヨドリはやっぱり海辺の鳥

全国鳥類繁殖分布調査の調査コースの海岸からの距離を測ったので,ついでにイソヒヨドリについてまとめてみました。

イソヒヨドリは内陸に分布を拡げているので,情報収集をすると,どうしても内陸の情報がたくさん集まってしまい,あたかも内陸の方が多いかのようなデータになってしまいます。そこで,調査コースを均等配置して調査している繁殖分布調査の現地調査のデータから海岸からの距離別に,記録率や,90年代からの比較をしてみました。

イソヒヨドリ.png

するとこんな感じです。確認率でみると,海からの距離が離れるにつれて確認率が下がってきて,やはり海辺の鳥だということがわかります。内陸部への進出が顕著な近畿から関東にかけての地域だけにしぼっても,海岸から1-2kmあたりが,全国よりも多い傾向はあるものの(これについては内陸部への侵出というよりは,山が海岸まで迫っていないとか地形的な原因か?)それほど違いはありませんでした。
また,海岸から1-2kmより遠い場所は1990年代には記録されず,2010年代になって記録されたコースが多いことから,近年の内陸部への進出が顕著であることも確認できました。
20年後の調査ではどうなっているかは,現時点ではわかりません。でも,開けた環境にいる鳥であることを考えると,内陸の都市にさらに分布するようになるとは思いますが,海辺の鳥ということは変わらないのでは,と思います。

ちなみに,調査コースの海岸からの距離は,ArcGISだと線までの最近接距離を簡単にだせましたが,今使っているQGISだとちょっと厄介で,まず海岸線に等間隔に点を打って,それを海岸線とみたてて,そこからコースまでの距離を計測させることが必要なので,ある程度誤差のある距離になってしまいました。指標としては十分ですけど。



posted by ばーりさ at 13:25| 活動報告

2023年09月11日

みにクル:九十九里浜北部のシギ・チドリ類調査(奴賀/守屋)

9月10日、九十九里浜北部のシギ・チドリ類調査に行ってきました。

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写真0.調査風景(Tさん提供)

日曜日で、天気も良いので海岸に人が多かったり、何かのイベント?をしていたりするので、環境省の腕章をして怪しまれないように調査をしました(笑)

まずは九十九里浜北部(コアサイト)を参加者のKさんとTさんと調査しました。

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写真1.Kさん(右)とTさん(左)photo by T. NUKA

遠方にミユビシギの群れを確認しましたが、遠すぎで陽炎でよく観察やカウントできず、そんな時はわかる範囲で概数を記録します。他にシロチドリ、メダイチドリ、イソシギを確認しましたが、1〜2羽でした。全体的に少なめです。。。

次は飯岡海岸(一般サイト)に移動し、Sさん家族4名と合流して調査を行いました。
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写真2. Sさん家族 photo by T. NUKA

近いところにミユビシギの群れを発見したので、カウント体験をしてもらいました。
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写真3.ミユビシギ(Tさん提供)
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写真4.ミユビシギのカウント中 photo by T. NUKA

結果、ミユビシギは13羽の群れで、トウネンが1羽混ざっていました。
posted by ばーりさ at 10:12| みにクル報告

2023年09月08日

群れが複数ある山のイワヒバリ調査2日目(高木)

先月、中央アルプスの木曽駒ヶ岳にてイワヒバリの調査をしてきました、の続きです。2日目は早朝から、雨で終わった初日の調査を忘れさせてくれるような晴天に恵まれました。まだ暗いうちに目覚めましたが、星空を眺めに出かけたらしい登山客の声が外から聞こえてきて、寝過ごしたかと一瞬ヒヤッとしました。出発の準備は昨夜のうちに済ませているので、さっと着替えて、寝具を片付けて、宿泊させてもらった山小屋の戸口に向かいます。まだ乾ききらない登山靴に、乾いた靴下を滑り込ませます。山小屋から木曽駒ヶ岳山頂の南斜面の調査ポイントまでは、ひとつピークを越えて少し歩きます。まだ薄暮の前でしたが、月や星が明るく足もとに不便はありません。昨日、イワヒバリを確認した場所の近くでしたので、声が聞けるかとゆっくり歩きながら耳を澄まして、目を左右に走らせましたが気配は感じられず。そうこうしているうちに、東の雲海の向こうが明るくなり、日の出が近づいてきました。

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八ヶ岳の南の端から太陽が顔を出したところ

目的のポイントに着くころには、太陽の光が地面を照らしてくれるようになりました。イワヒバリが現われるのを待つことにした私は、湿って不愉快な登山靴から哀れな足を引き抜き、大きな石の上で日向ぼっこさせます。太陽光は偉大ですね。じとっと水けを吸った靴下も、乾ききっていなかった登山靴も、朝食を口に放り込んだり、カヤクグリの声に耳を奪われたりしているうちにほとんど乾かしてくれました。いそうだなぁと思った予想はハズレたかな、とあきらめて歩きはじめると、1羽のイワヒバリが顔を出してくれました。あまりこちらを警戒している様子はありませんが、影響を与えないように距離をとって後を追います。しばらくするともう1羽が現われ、2羽が連れ立って飛んでいきます。すると、他からもイワヒバリが飛んできて、大きな岩が集まっているあたりに5羽がゆるく集まって、せわしなく動き回ります。それ以上増えなかったので、どうやら5羽の群れだったようです。5羽がそろっていたのは短時間で、すぐに群れはばらけて各自で餌を探すようでした。
ひとつ確認しておきたかったことは、どれくらい尾根の反対側まで移動するかってこと。尾根を越えられてしまうと、追跡できなくなることが多くなるので、今後、イワヒバリの群れの個体数を調べようとした時に把握が難しくなると思っているからです。確認しやすいよう斜面の下側の登山道から尾根沿いの登山道に場所を移します。イワヒバリが観察されていた側の斜面は比較的緩やかですが、反対側は切り立っています。尾根に近づいてきた2羽のうち1羽は尾根の手前で引き返していきましたが、1羽は尾根を越えて姿を消しました。しかし、すぐに上がってきて尾根から突き出た岩の上などにとまって休むなどしており、ほとんど切り立った側の斜面は利用せずに、しばらくすると緩斜面の方に戻っていきました。

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左の翼を掻いたら、右の翼も掻くべし
北側急斜面に突き出た岩の上にて

この日は晴れていましたので、調査範囲を広げて歩くことに。このあと、木曽駒ヶ岳の北西斜面や、千畳敷カールと呼ばれている山頂からは南に1km以上離れた場所でもイワヒバリを確認しました。2日間の調査で、少し距離の離れた場所4か所でイワヒバリを確認することができました。
過去の他山での研究によると、イワヒバリの群れが守るなわばりは直径200〜500mほどのようです。そのことを考慮すると、今回調査した範囲には、2〜4の群れがいたのではないか、と。確認できた群れの個体数の最大値は5羽だったこと。その他にも探索努力に対するイワヒバリの出現頻度など、来年以降、イワヒバリの総個体数を調べるための調査設計の参考になる情報を集めることができました。

調査の間に、一度、ライチョウの親子に道を塞がれました。足環がついていて、初日に山頂付近で顔を出してくれたのと同じ家族でした。道をあけてもらえるのを待ちながら、ゆっくり写真を撮らせてもらいました。

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親の居場所を声を頼りにして、あとを追うヒナ

ひととおり調査を終えたころ主要な登山ルートが大変なことに。。登山客の増え方に危機感を覚えて、早めに下山しました。案の定、ロープウェーの駅には人があふれており、整理券を受け取ると、1時間待ち、とのこと。バスやロープウェーで標高2,600mまで登ってこれるのは、調査時間の確保にも体力温存にもありがたいのですが・・・。
順番を待っている間に雨が降り出してきました。貴重な晴れ間に調査ができて良かったです。


この調査は、バードリサーチ調査研究支援プロジェクト2022年度のバードリサーチからの調査研究プランとして実施しています。
また、株式会社モンベルより、寄付つきTシャツサポートカードによるご支援もいただいています。
posted by ばーりさ at 08:00| 研究支援(近況報告)