2021年11月19日

近況報告2020≫ 蓮田の防鳥ネット有効性(無効性)の検証、野鳥の羅網死をなくすために

バードリサーチの研究支援プロジェクト(2020)で、皆様からご支援いただいている調査の近況報告が届きました。

日本鳥類保護連盟の境友昭さんによる
蓮田の防鳥ネット有効性(無効性)の検証、野鳥の羅網死をなくすために
です。

蓮田で羅網死している鳥が内側から引っかかっていることから、侵入を防ぐ目的の防鳥ネットが、本来の機能を果たしていないのではないか?そうであれば、ネットの敷設は農家の負担でしかないと考え、主な対象を昼行性のサギ類とオオバンとして、蓮田への侵入経路などの行動と蓮田の対策状況や収穫の段階との関係を調べようと企画された調査研究プランです。(詳細はコチラ

いただいた近況報告をご紹介します!

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蓮田の防鳥ネット有効性(無効性)の検証,野鳥の羅網死をなくすために
境友昭([公財]日本鳥類保護連盟)

[はじめに]
 「防鳥ネットをどう見ているの?」と鳥たちに聞きたいところですが,鳥たちは答えてはくれません。「見ればわかるだろう」というのが,彼らの回答と理解して,まず,鳥たち(ここでは,オオバンとサギ類)の行動を観察するところから始めました。
 この時期(11月)の蓮田の昼間には,主にオオバンとサギ類がいます。サギ類は,防鳥ネットの有無にかかわらず,蓮田で休んだり採餌したりしていますが,オオバンは,防鳥ネットのある蓮田にはあまりいません。防鳥ネットがあってもオオバンが遊泳している蓮田の多くは,隣接する蓮田には防鳥ネットがありません。しかし,羅網する鳥ではオオバンが最も多く,「どうして?」という疑問が湧きます。

[羅網の実態]
 表-1は,前季での,調査区域での鳥種と羅網数の調査結果です。2021年〜2022年は,現在調査中です。さて,この地区では,羅網した鳥のほとんどがオオバンであることがわかります。蓮田で観測された鳥の延べ羽数でも,オオバンが最も多く,次いでサギ類です。この調査は,昼間(日没前1時間から2時間)ですので,夜間に蓮田に出入りするカモ類の侵入数は観察されていません。
 サギ類の羅網は,この地区では1羽のみです。多数のサギ類が蓮田を利用しているにも関わらず,羅網数が少ない,という傾向が見られます。表-2には,蓮田の状況,天井ネットの有無と,蓮田を利用する鳥の関係を示しています。サギ類は,天井ネットがあっても無くても,侵入数に大きな違いはありませんが,オオバンは天井ネット有の場合の120羽に対して天井ネッが無い場合には800羽と,大きな違いがあります。この観察結果から推定すると,昼間のオオバンは,「天井ネットを避けて蓮田を利用している」とすることができそうです。しかし,現実的に天井ネットに羅網するのはオオバンなのです。

表1表2鳥の羅網部位と条件別羅網個体数.jpg

 また,表-2からは,サギ類は,蓮田が未収穫の時から蓮田を利用しますが,オオバンは蓮の葉が枯れて,水面がある程度見えるようになってから蓮田を利用し始め,特に収穫が終了して水面に障害物が無くなってから,蓮田の利用頻度が高くなっていることがわかります。

[いつ羅網するのか]
 図-1は,オオバンの週当たりの羅網数と収穫済みの蓮田の数(3週間移動平均)を示しています。この地区では,収穫は10月と12月に集中しているようですが,オオバンの羅網は,それより約1週間から2週間遅れてピークに達しています。まだ,確定できることではありませんが,オオバンは収穫後に時間を経て蓮田を利用するようになる模様です。
 参考までに,2019年に調査した結果(別地区)を図-2に示しますが,図-1と同様にオオバンは,ハス田の収穫が終わって2週間ほど遅れて蓮田の利用を始めています。図-2は,日没から1時間の間での調査ですが,この時間帯に蓮田に侵入する鳥のほとんどはオオバンです。マガモをはじめとするカモ類は,その後で蓮田に入るようです。いずれにしろ,日没後30分を経過すると,ほぼ宵闇になり,人の肉眼で防鳥ネットを識別することはできません。図-2の調査蓮田には,防鳥ネットはありませんでしたが,オオバンは何の躊躇もなく,蓮田に飛び込んでいました。

図1週間羅網数b.jpg図2蓮田に侵入するカモ類の変遷b.jpg

[オオバンの着水,離水姿勢と羅網のメカニズム]
 オオバンが天井ネットに羅網する部位は,ほとんどが「足」です。カモ類は,翼や首が多いのと対比すると,羅網メカニズムに違いがあるように思われます。そこで,オオバンとカモ類(カルガモ,マガモ)の着水,離水角度について調べてみました。オオバンは,着地・直水する時,写真-1のようにホバリングするような姿勢から,おおよそ60度くらいで着水し,着地の場合はほぼ真上から降下します。これに対してカモ類は,30度前後の角度で着水します。この角度で着地すると,前のめりになって転倒することがあります。ところが,離水する場合には逆で,オオバンは30度以下の角度で水面を蹴りながら離水しますが,カモ類は60度くらいの角度で離水することができます。なお,サギ類は,ほぼ垂直に離陸,着陸します。
この着水,離水角度(姿勢)の違いが羅網部位の違いに関係している可能性があります。オオバンは,夜間の着水時に天井ネットを認識せずに,通常の姿勢で着水を試みるとすると,まず,脚が天井ネットに掛り,そこで減速すると,頭部(胴体)が別の目合いに掛かり,胴体が抜ければ足で羅網する形になると想像されます。これは,内田理恵氏がバードリサーチ調査研究支援プロジェクト「野鳥が羅網しにくい網の研究(2019年)」で指摘している羅網メカニズムと同じです。

写真1オオバンの着水姿勢.jpg
写真-1 オオバンの着水姿勢(ほぼホバリング状態)

 オオバンが,天井ネットを通過して蓮田に侵入を図ったに違いないという証拠が写真-2です。足でも羅網していますが,胴体も網目に掛かっています。胴体が網目を抜けてしまったら,足だけで羅網している状態になると思われます。
オオバンの胴体の周長はおおよそ300mmです。ほぼ垂直に近い角度で天井ネットに向かって降下すると,ネットの目合い(125から150mmメッシュ,周長500〜600mm)が,そのままのサイズの穴となりますので,翼を畳めばそのまま通過できることになります。しかし,運悪く脚と胴体が別々のメッシュに入った場合,羅網事故となるのでしょう。この点,カモ類は,着水角度が小さいので,天井ネットの実効サイズが約1/2(30度で降下する場合)となって,網目を通過することができません。

写真2足と胴体で羅網したオオバン.jpg
写真-2 足と胴体で羅網したオオバン

 オオバンは,離水するとき,水面を蹴るようにして滑走しながら高度を上げていきます。その角度は,15度から30度くらいと低く,完全に離水するまでおおよそ5mから10mほど滑走します。このような離水姿勢では,天井ネットのある蓮田から退避するとしても,サイドネットに衝突することはあっても,天井ネットに衝突する可能性は低いものと思われます。首や翼で羅網したオオバンが少ないのは,このような離水の仕方に関係すると考えられます。一方,カモ類は離水角度が高く,少しの飛行で天井ネットに衝突してしまいます。

[防鳥ネットに対するサギ類の行動]
・天井ネットの下を飛行・通過する
 天井ネットのみでサイドネットが張られていない蓮田では,天井ネットの下を,何事も無いように飛行して,蓮田を通過します。
・前方のサイドネットを避ける
 蓮田からの退避飛行中であっても,前方にサイドネットがあると,転回してネットを避けます。その距離は,おおよそ10〜15mです。
・防鳥ネット,支柱に止まります
 ダイサギ,コサギは,防鳥ネットの支柱やネットを支える支線に止まります。天井ネットに穴があると,そこから蓮田にダイビングする形で侵入することがあります。
・緊急退避中,何度も天井ネットに衝突します
 サギは,ほぼ垂直に離陸します。人影に驚いて蓮田からの退避を図ったコサギは,羽ばたくたびに天井ネットに衝突したり,網目に首を突っ込んだりします。数度繰り返し,やがて安定した水平飛行に移ることもありますが,「学習していない」という感じです。写真-3は,天井ネットの網目に首を突っ込み失速したコサギです(この後無事に蓮田を出ました)。

写真3天井ネットに首をなコサギ.jpg
写真-3 天井ネットに首を突っ込んで失速するコサギ

 サギ類の防鳥ネットへの羅網数は,オオバンやカモ類と比較すると少ないようです。サギ類は,日中に蓮田を利用していますが,夜間は利用しません。サイドネットを避けることから,障害物を目視で認識した場合,基本的にはこれを回避する行動をとるため,羅網の危険性が低いのではないかと考えられます。しかし,緊急退避時に何度も天井ネットに衝突するように,眼の高さより低いところは認識できても,高いところは,視界から外れている可能性があります。サギ類は,天井ネットの孔にダイビングするという特別な行動を除いて,蓮田に近接する通路,畔に着陸し,そこから蓮田に歩いて侵入し,歩いて出たり,サイドネットの無いところから水平飛行で脱出したりします。

[中間報告のまとめ]
 昼間の行動を観察すると,オオバンは防鳥ネットの無い蓮田を利用します。防鳥ネットのある蓮田が隣接している場合には,歩いてその蓮田に入ることもあります。また,オオバンは,比較的広い開放水面のある蓮田を利用します。目的とする水面に急降下するように着水しますので,夜間,もし天井ネッが視認できない場合,天井ネットに衝突し羅網する可能性があります。サギ類は,歩いて蓮田に侵入しますので,天井ネットのみの蓮田では出入り自由です。防鳥ネットが視界に入っている場合には,これを回避する行動をとるようですが,見えない場合(見えないと思われる事例)では,防鳥ネットを回避できず衝突することがあります。
 調査地域での防鳥ネットの敷設率は50%を切っていますが,この状況では,オオバン,サギ類とも蓮田への侵入に障害となる可能性は低いように見えます。夜間に食餌行動をとるオオバンは,蓮田への侵入時に羅網することがありますが,サギ類は昼行性ですので,羅網機会は少ないものと思われます。
posted by ばーりさ at 12:16| 研究支援(近況報告)

2021年10月12日

ネットワークカメラによる水場モニタ


 バードバス調査は自作したセンサーカメラを使用して、水場をモニタリングしていますが、現在、既製品のネットワークカメラも試しています。
 ネットワークカメラは、カメラ自体がIPアドレスを持っていてパソコンにつながなくても映像を見ることができます。防犯用やペットの見守り用などで、お値段はピンキリですが3,000円程度で販売されている機器もあります。
c100.jpg
 現在、使用しているのはTP-linkのc100(屋内用なので雨の日はしまっています。ちなみに屋外用のc310という製品もあります)というネットワークカメラで、Wi-fiにつなげるタイプでLANケーブルが必要なく、電源があれば使用できます。基本的にスマホがあればよく、専用アプリを入れて指示通りしていけば設定できます。
無題.jpg
 出先でも確認することができ、モーションセンサーで画像内で動きがあればビデオ録画を始め、その時にスマホに通知もしてくれます。カメラの調整も必要なく、ヤモリぐらいしか映りませんが、ナイトビジョンもあり夜も撮影ができます。

 やや面倒なのは撮影された鳥の画像の確認です。専用アプリから抜き出すことも可能ですが、カメラに入れてあるマイクロSDを抜き取ってパソコンに読み込んだ方が簡単です。ただ定期的に確認する必要があります。
 それと、動いているものを何でも検知するので風で枝が揺れるとずっと撮影しています。別種のセンサーと組み合わせればいいのかもしれません。

 他の機能としては、カメラにアカウントをつけると、同じネットワークの中にあるパソコンを使用してYoutubeのLive配信もできます(セキュリティ上、自庭の配信はお勧めしませんが)。

 マイクの音がいまいちとか、細かい設定はできないですが、けっこうな多機能で3,000円ほど、家の中からのバードウォッチングを簡単に試すには良いかもしれません。もし他にも(安くて)よい製品を知っていたら教えてください。

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posted by ばーりさ at 17:59| 電子工作戦隊

2021年10月07日

「カモ学講座」嶋田哲郎 著/森本元 監修 緑書房

宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さん(伊豆沼のサンクチュアリセンターへ行くとお目にかかれます)が「カモ学」という本を出版されました。カモ学は嶋田さんの造語ですが、カモだけの話ではなく、カモ科(カモ、ガン、ハクチョウ)ぜんぶを解説している本です。こういうスタイルは生きもの本では珍しくて、特定の種について詳しく書いた本はありますが、タカ学とかツル学という解説書はたぶんなかったと思います(あったら著者の方ごめんなさい)。
そんなわけで「カモ学」は、このガンや、あのハクチョウだけでなく、冬になると水に浮かんでいる丸っこい鳥ぜんぶを知りたいんだ、という圧倒的多数のバードウォッチャーの皆さんにお応えできる本だと言えるでしょう。
内容はまず、カモ、ガン、ハクチョウというカモ科御三家の特徴にはじまり、それぞれの食物や採食行動、渡りコース、繁殖形態、越冬地での行動と至極網羅的に進みます。これらのページは「解説」に徹して次々と事実が述べられていく感がありますが、読み進んでいくと終盤の「ガンカモ類の保全」の章では調子が変わってきて、著者の実体験から熱のこもった問題と対策のありようが語られます。この章では嶋田さんの人柄が感じられると思います。
「カモ学講座」は本日発売です!

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posted by ばーりさ at 18:18| 書籍紹介

2021年09月13日

「新版 生態工学」 亀山章 監修/倉本宣 ・佐伯いく代 編著 朝倉書店 

編者の明治大学の倉本さんから「新版 生態工学」をお送りいただきました。ありがとうございました。

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亀山章 監修/倉本宣 ・佐伯いく代 編著
朝倉書店 定価3,080円(本体2,800円+税)

この本は,生態工学の教科書的な本で,生物の調査方法から開発が生物に及ぼす影響やアセスメント,ミティゲーション,植生管理や市民科学などについて幅広く扱っています。

 倉本さんによると,

 生態工学は生物多様性の保全を大きな目的とする学問であり、身のまわりの自然や生きものを扱うところに特色があります。
本書は約20年前に刊行した図書をまったく新しく書き直したものです。
 大学生向けの教科書ですが、技術を使いこなす市民と市民のための技術者のあり方について最終章を当てたことが未来につながっています。

とのことです。

書店でみかけましたら,手に取ってみてください。

出版社のページ
posted by ばーりさ at 16:20| 活動報告

2021年08月31日

今年も、だだちゃ豆の枝豆をいただきました。

この季節になると、(株)シー・アイ・シーの今井さんから、だだちゃ豆の枝豆が届きます。だだちゃ豆は枝豆専用の茶色味がかった大豆です。今年はテレワーク中で事務所には毎日来ないので、来た人から持って帰り、しばらく来ない人用には冷凍庫に保存してあります。今井さん、いつもありがとうございます。
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posted by ばーりさ at 08:46| いただきもの