2017年12月07日

近況報告2016≫大阪府域におけるサシバの生息情況調査

バードリサーチの研究支援プロジェクト(2016)で、皆様からご支援いただいている研究の近況報告が届きました。

サシバプロジェクトin大阪による「大阪府域におけるサシバの生息情況調査」です。

 サシバは里山に多く生息する鳥ですが、個体数が減少し、環境省のレッドリストでも絶滅危惧U類に指定されています。大阪府でも彼らの生息環境が減少し、個体数が減っていると考えられています。この調査研究プランは、40年前に繁殖状況が調べられている地域を重点的に大勢の参加のもと調査し、現在の繁殖分布を明らかにし、過去との比較やイノシシ除けの電気柵などの影響を調べよう、というものです。(詳細はコチラ


いただいた近況報告をご紹介します!
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サシバプロジェクトin大阪にご支援いただきありがとうございます。

小島幸彦氏による、大阪府南部(河内長野市周辺)の約40年前のサシバの繁殖データをもとに約50か所の現地調査を終えて、まとめ中です。
のべ約140日、170人の方々にご協力いただきました。
先日、11月17日・18日、大阪市立自然史博物館で開催された自然史フェスティバルで簡単な中間報告を展示しました。
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posted by ばーりさ at 11:10| 研究支援(近況報告)

2016年12月27日

近況報告2015≫火の鳥 巣箱に んみゃーち!!!

バードリサーチの研究支援プロジェクト(2015)で、皆様からご支援いただいている研究の近況報告が届きました。
浜地歩さんと植村慎吾さんによる「火の鳥 巣箱に んみゃーち!!!」です。

 アカショウビンは、枯れ木やタカサゴシロアリの巣など脆い材質のものに自分で巣穴を掘って繁殖します。木製の巣箱を使ってもらうことも難しいため、これまで繁殖生態の研究が行われていませんでした。そこで、浜地さんと植村さんは、巣穴を掘りたくなるようなコルク製の箱を林内に設置して、そこで繁殖するアカショウビンの生態をCCDカメラで盗み見ようという研究です。(詳細はコチラ

いただいた中間報告をご紹介します!
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アカショウビンの巣箱
浜地歩 植村慎吾

中間報告

 4月〜6月にかけて、今回のご支援で新しく設計したアカショウビン用の巣箱を10個作成し、宮古島の山林内に設置しました。昨年まではコルクだけでできた巣箱を設置していましたが、コルクだけの巣箱では、せっかくアカショウビンが繁殖しても巣内の様子を見ることが難しいため、巣箱の利点を活かせませんでした。
 そこで、新しい巣箱は木の板で巣箱の外枠と背面をつくり、前面のみをコルクにして作成しました。新しい巣箱は、内部に十分な広さを設けるためと強度を保つための設計に腐心しました。コルク部分は厚さが10cmあるので、アカショウビンが掘りやすいように中央をくぼませることが大変でした。この巣箱は上面に穴(開閉可能)を開けてあるため、繁殖が始まればCCDカメ ラを取り付けて産卵のタイミングや各ヒナへのエサ配分やヒナ間競争など、外からの撮影ではわからないアカショウビンの繁殖生態を詳しく知ることができます。

 アカショウビンは宮古島に4月に渡ってきて1ヵ月から2ヵ月もかけて営巣場所さがしと巣穴堀りをします。アカショウビンが営巣できる枯れ木の数は限られていると思われるので、新しい巣箱でも今年さっそく利用してくれないかと期待して いました。しかし、結局今年は新しい巣箱では繁殖してくれませんでした。
 一方で、一昨年に設置したコルクだけでできた巣箱には今年2ペアが繁殖しました。巣箱に使っているコルクは設置当初はまだ硬く、林内に設置して1年以上経つことでコルクが朽ちて柔らかくなるために、アカショウビンが巣穴を掘りやすくなるのだと考えられます。新しい巣箱も、来年以降はコルクが柔らかくなってどんどん利用されると期待しています。

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巣箱の作成 手前は完成品です。
上面の板の切込みからCCDカメラで覗きます。

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設置した巣箱 地元の子供達に説明しています。  
posted by ばーりさ at 21:38| 研究支援(近況報告)

近況報告2015≫日本の鳥の今を描こう 全国鳥類繁殖分布調査

バードリサーチの研究支援プロジェクト(2015)で、皆様からご支援いただいている研究の近況報告です。まずはバードリサーチによる「日本の鳥の今を描こう 〜 全国鳥類繁殖分布調査へのご支援 お願いします 〜」の進捗をお知らせします。

 全国鳥類繁殖分布調査は、1970年代と1990年代に環境省により行なわれた調査です。この2回の調査で全国的な鳥の分布とその変化が明らかになり,日本の生物多様性の評価や,レッドリストの改訂に役立てられました。全調査地を調査するのに5年をかける大規模な調査で、全国の皆さんの協力によって成し遂げられてきました。2回目の調査から20年が経過し、3回目となる今回はバードリサーチから声をかけさせていただきましたが、多数のNGOと環境省の共同事業として実施しています。
(詳細はコチラ

 プロジェクトのを立ち上げた昨年度に引き続き、今年度からは現地調査が始まりました。皆さまからのご支援で、着実にプロジェクトを進め、初年度分のデータの集計も行っています。外来鳥の分布拡大や夏鳥の復活など、早くも傾向が見えてきています。以下、担当している植田より、2016年度の取り組み状況についてご報告します!
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全国鳥類繁殖分布調査 中間報告

今年からスタートした繁殖分布調査。皆様のご支援および調査への参加のおかげで,順調にスタートすることができました。

 今年から2020年までの5年間で,全国2300コースを調査し,日本の鳥の分布を明らかにしていきます。今年は調査講習会をしたり,ニュースレターを発行したりして,調査参加者を募り,調査をスタートさせました。

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調査講習会の様子

 これまでに集まった調査結果からは,過去に調査を行なった1970年代,1990年代に続き,アオサギやカワウなどの大型魚食性の鳥やガビチョウやソウシチョウといった外来鳥の分布拡大が続いていることがわかってきました。
 また,1990年代には減少が心配されていた夏鳥たちに復活の兆しがあることも見えてきました。

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 今後もデータを蓄積していくことで,こうした変化の地域的な差や,その他の鳥の状況についても明らかにしていきたいと思っています。
また,来年以降は,若手の参加を増やすために,学生へのレンタカー代の支援や東京など調査参加者の多いところでは,より詳細な分布状況を明らかにするための調査などもしていきたいと考えています。調査への参加,引き続きのご支援よろしくお願いいたします。

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調査参加者へのお礼のシールも作りました
posted by ばーりさ at 12:42| 研究支援(近況報告)

2016年01月07日

近況報告2014≫オオタカにおける繁殖適地環境の段階的評価モデルの構築

バードリサーチの研究支援プロジェクト(2014)で、
皆様からご支援いただいている研究の近況報告が届きました。
夏川遼生さんによる「オオタカにおける繁殖適地環境の段階的評価モデルの構築」です。

オオタカがどんな環境に営巣し、繁殖しているのか?彼らの生息環境についてはこれまでも多くの研究が行なわれてきました。しかし、オオタカの生息環境を効果的に保全していくためには、彼らが繁殖している環境の中でも、より適している環境と、そうではない環境を明らかにし、その違いを示すことが大事です。夏川さんは、自身の調査に加え、多くの協力者からの情報提供を受け、プランを企画した時点で56か所の営巣地の情報をそろえていました。繁殖の継続性と巣立ちヒナ数のデータから、生息環境を段階的に評価し、これまでの研究よりも、より詳しくオオタカにとって適した環境を割り出そう、という研究です。
(詳細はコチラ

いただいた中間報告をご紹介します!
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オオタカにおける繁殖適地環境の段階的評価モデルの構築
(近況報告)


タイトルが「段階的評価モデル構築」ということで、いる/いない→繁殖が成功しやすい/失敗しやすい→巣立ち雛数が多い/少ないの3段階解析を行っていますが、今のところ、この内いる/いないについては、現地調査、環境解析、統計モデルでの解析のすべてが終了しています。実は途中、PCの容量を超えたようでRが動かなくなるアクシデントもありましたが、ようやく終わりました。
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写真1.GISでの環境解析の様子

 現地調査は多くの方々にお手伝いいただき、急傾斜地での営巣林の植生調査やオオタカの巣立ち雛数のカウントなどの調査を行うことができました。
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写真2.営巣林の植生調査の様子

 後は、繁殖に成功しやすいかどうか、雛数が多いかどうかなどの繁殖成績に影響する要因を明らかにして、オオタカが暮らしやすい環境はどのような環境なのかを明らかにしたいと思います。

posted by ばーりさ at 11:40| 研究支援(近況報告)

2015年12月25日

近況報告2014≫なぜ、モズははやにえを食べずに残しておくのか?

バードリサーチの研究支援プロジェクト(2014)で、
皆様からご支援いただいている研究の近況報告が届きました。
西田有佑さんによる「なぜ、モズははやにえを食べずに残しておくのか?」です。

モズのはやにえがいつまでも残っているのは、わざとではなく、うっかり忘れてしまったのではないか、という発想の研究です。モズがさえずりにたくさんの鳴き声を取り入れ、たくさんのレパートリーをもっていることはよく知られています。西田さんは、覚えていられることには限界がある、たくさんのさえずりを覚えていると、それだけ貯食について覚えていることができなくなるのではないか?と考えました。この研究は、さえずりのレパートリー数と縄張り内に残されているはやにえの数の関係を調べてみようという研究です。(詳細はコチラ

いただいた中間報告をご紹介します!
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なぜ、モズははやにえを食べずに残しておくのか? (近況報告)

調査へのご支援,ありがとうございました.
「モズのはやにえ」調査は,いまも継続中です.

モズは,枝先などのとがった場所にはやにえをよく作ります.
モズの縄張り内にある木々を片っ端から見ていくことで,はやにえを探しています(図1).
図1「調査地の風景.jpg
図1「調査地の風景」

見つけたはやにえには,発見した年月日と通し番号を記したシールをつけています(図2).
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図2「はやにえ調査のシール」

1,2m程度の高さの木ならば,はやにえの探索は簡単です.
しかし,それ以上の高さの場合は,首をくの字にして木を見上げて調査しなくてはいけません.
そんな調査が2,3日もつづくと,筋肉痛で首がいうことを聞かなくなります.

いままで確認できたはやにえの数は,およそ2800個ほどです.
すっかり寒くなったいまでも,モズたちはせっせと新しいはやにえを作リ続けています.
はやにえの数は,これからも増えていきそうです.

はやにえの構成ですが,カエルやイナゴが多いです(図3,4).

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図3「干からびたカエル」

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図4「高い鮮度のイナゴ」

そのほかには,ケラやカマキリ,コオロギなどのはやにえが多く見つかります(図5,6,7,8,9,10).

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図5「まだ生きていたケラ」

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図6「くの字に曲がったカマキリ」

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図7「体が黒く変色したコオロギ」

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図8「種不明のエビ?」

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図9「色鮮やかなスズメバチ」

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図10「又枝に挟まれたオサムシ?」

これらの生物は,モズが生息する農耕地でよくみられる生物です.
縄張りの生物相を反映して,はやにえの種類が決まっているかもしれません.

10月からスタートしたはやにえ調査ですが,12月現在ほとんどのはやにえが消費されることなく現存しています.
「これらのはやにえがいつ食べられてしまうのか」が,私の研究では非常に重要な結果です.

寒さが厳しくなり,手がかじかむ季節になりました.
寒さに負けずひきつづき調査をして,おもしろい結果をみなさまにご報告できればと思います.

posted by ばーりさ at 10:29| 研究支援(近況報告)