2019年03月07日

生物多様性のための農業(守屋)

「生物多様性のための農業環境支払い国際シンポジウム」というのに参加するため法政大学に行ってきました。

キャンパスがビルなんてかっこいい...。

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生物多様性のための農業環境支払いというのは、農業は景観や生物の生息地も提供することがあります。
そういった多面的機能を活用するために、自然環境や生物多様性のためになる活動に対してお金を支払いましょうという取り組みです。

独キール大学のローマン教授がお話しされたEUの農業環境政策についての内容だと、地面に巣をつくる鳥類に対して、刈り取り時期のをずらしたり、放牧の密度を減らしたり、農薬を使わなかったり、タゲリやヒバリ用の区画を創出するなど農業が自然環境の保全に利することを対象にしていました。

また支払いに関しては、ヒバリ用の区画の整備は1ha/18ユーロとか、ヒナ1羽を巣立たせたら150ユーロなど取り決めも具体的で、しかも、実際にヒバリが使ったりヒナが巣だったりした結果がないと支払われない仕組みだそうです。面白いですね。

日本の農政にも環境型直接支払制度というのがあり、生態系保全の活動で助成が得られるのですが、草花の植栽や清掃などでも受けられるため、活動の複雑な生態系保全活動はあまり行なわれていないようです。確かに生態系保全活動をやれといわれても何をするかは悩みますね。私なら、なつみずたんぼや ふゆみずたんぼ、素掘り水路の維持管理などを行ってほしいと思いますが、そもそも知らなければ無理でしょう。環境NPOなどが農家と共同で活動できる仕組みがあるといいのかもしれないと思いました。

タマシギの親子を見つけたら、その水田の持ち主に10,000円とかどうでしょう。
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posted by ばーりさ at 22:28| その他

2018年08月19日

季節前線ウォッチのフォームが使いやすく!

東京はここ数日,涼しくなってきて,秋の雰囲気を感じられるようになっていました。モズの高鳴きそろそろじゃないかと思っていましたら,九州で聞かれ始めたようです。熊本と大分から情報が届きました。九州は早いんですよね。

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季節前線ウォッチで情報を送るとき,地図から場所を選ぶのがちょっと面倒だと感じたことないですか?とくにスマホで現地で聞いたときには,地図から場所を選ぶんじゃなくて,「ここで聞いたんだよ」と簡単に送れると楽ちんです。

できるようにしました。


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地図の下の「現在地へ移動」のボタン押してください。地図が勝手に動きます。
地図が自動で拡大して,位置をしっかり確認できたら完璧ですが,そこまでできてません。完璧じゃないところがバードリサーチらしいということでお許しください。
信用いただいて送っていただくか+ボタンをおして,地図を拡大してください。そんなことすると地図の位置がずれてしまいますが,そんな時は,「現在地へ移動」のボタンを再度押せばOK。

ぜひこのフォームを使って,情報お寄せください。

posted by ばーりさ at 17:43| その他

2018年02月08日

アオジの足環の文字を写真から読み取れました

バードリサーチの会員で、大分県にお住まいの池永祐二さんから足環が写ったアオジの写真が届きました。金属足環は山階鳥類研究所の標識調査に参加しているボランティア(バンダーと呼ばれています)の皆さんが、全国各地で装着しているものです。

秋の渡り時期にアオジが多い北海道の浜頓別で標識調査をしている小西敢さんに写真を見てもらったところ、「2AG-21610」と読み取ることができました。大型の鳥の足環は写真から読み取れることもありますが、小鳥の足環の刻印を読み取ることができたのは珍しいと思います。

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足環の付いたアオジ(撮影 池永祐二)

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4枚の写真に写っていた足環を並べると、「2AG-21610」と読める。

追伸(2018-02-13)
 池永さんが山階鳥類研究所に照会したところ、この足環を装着したのは刻印を読み取っていただいた小西さんご自身であることが分かりました!
posted by ばーりさ at 12:57| その他

2017年12月30日

日中共同コハクチョウ幼鳥率調査にご協力ください

今年の冬、日本で越冬しているコハクチョウの幼鳥率を、中国の幼鳥率と比較してみようということになりました。皆様のご協力をお願いいたします。どこの越冬地でも結構ですので、コハクチョウの幼鳥・成鳥数を調査してくださった方は、koyama@bird-research.jpまでお知らせください。日本国内ではハクチョウ類の幼鳥率を比較したいので、オオハクチョウの幼鳥・成鳥数もお送りください。

中国でガン・ハクチョウ類が減少している
ガン類とハクチョウ類は、カリガネのような絶滅危惧種を除いて、日本だけでなくヨーロッパや北米でも大半の種が増加しています。これは地球温暖化によって繁殖地の高緯度地域で氷雪がない期間が長くなっていることや、越冬地で稲やデントコーンの収穫残渣を食べるようになり、繁殖時期の栄養状態がよくなったことが理由だと考えられています。

ところが中国を越冬地とする個体群は例外で、特にコハクチョウとマガンは近年、急激に数が減っています。個体数の減少要因は中国での生息地破壊がではないかと推測されていますが、もしかするとロシアの繁殖地でも問題が起きているかもしれません。

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日本、韓国、中国のコハクチョウの個体数変化
(韓国はオオハクチョウの越冬地でコハクチョウは少ない)


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日本、韓国、中国のマガンの個体数変化

幼鳥率で繁殖状態を比較してみよう
そこで、中国科学院のCao Leiさんから、日中のマガンとコハクチョウの幼鳥率を比較できないかとの提案がありました。幼鳥率はその年の繁殖成功率の目安になりますから、もし中国の幼鳥率が低ければ、ロシア北極圏での繁殖がうまくいっていない可能性が示唆されます。マガンの幼鳥をカウントするのは難しいですが、コハクチョウは灰色の幼鳥を数えることが容易ですので、ぜひ、皆さんのご協力をお願いいたします。
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コハクチョウ。当年生まれの0歳(幼鳥)は灰色をしています。

この12月にCaoさんが長江流域の中国最大の湖であるポーヤン湖で行ったカウント調査では、コハクチョウ約3万7千羽の幼鳥率は12%でした。

一方、日本の幼鳥率は2004/05〜2012/13年の平均では、各地の生息地でおおむね10〜20%ですが、今年はどうでしょうか?
コハクチョウの成鳥数・幼鳥数をカウントしてくださった方は、koyama@bird-research.jpまでお知らせください。幼鳥はだんだん白くなっていくため、1月中に調査をしてください。日本国内ではハクチョウ類の幼鳥率を比較したいので、オオハクチョウの幼鳥・成鳥数もお送りください。

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(モニタリングサイト1000ガンカモ類調査 第二期とりまとめ報告書より)


コハクチョウとマガンの個体数変化の出典
QIANG JIA, KAZUO KOYAMA, CHANG-YONG CHOI, HWA-JUNG KIM, LEI CAO, DALI GAO, GUANHUA LIU and ANTHONY D. FOX. Population estimates and geographical distributions of swans and geese in East Asia based on counts during the non-breeding season. Bird Conservation International, Available on CJO 2016 doi:10.1017/S0959270915000386

posted by ばーりさ at 10:13| その他

2017年03月27日

珍鳥  vs カメラマン(奴賀)

近年、野鳥を観察する人や撮影する人の中にマナーの悪い人がいると問題になっていますが、つい最近もソデグロヅルの観察について、以下のような出来事が起きていました。千葉県野鳥の会会報「房総の鳥」No.517 2017年3月号 21ページの記事を許可を得て全文掲載します(写真は一部改変)。

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ソデグロヅル


以下、「房総の鳥」No.517 2017年3月号 21ページの記事。
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旭市の水田にソデグロヅルが飛来  齊藤敏一

 旭市北部に広がる通称「干潟八万石」の広大な水田に、3羽のソデグロヅルが飛来しました。成鳥が2羽と幼鳥が1羽で家族と思われます。最初に見つけたのは地元の写真愛好家で、11月26日だったそうです。私は飛んでいる3羽を12月2日に偶然見つけましたが、まだカメラマンは2〜3人というところでした。12月4日の日曜日は天気が良かったこともあり、数十人のカメラマンがやって来ました。細いあぜ道に車がずらりと並び、大砲のような望遠レンズを構えたカメラマンがツルの降りた田んぼを取り囲んでいました。
 ソデグロヅルは地上に降りているときは全身が白く、見た目がサギとあまり変わりがありません。そこで翼の先が黒い特徴的な姿を撮ろうと、わざと近づいて飛び立たせた人もいたそうです。そのためソデグロヅルは落ち着いて餌を取ることもできず、その日の夕方には飛び去ってしまいました。その後は香取市に移ったそうですがそこにもカメラマンが押しかけたそうで、同じことが繰り返されたことでしょう。
 昨年、旭市の飯岡漁港にコクガンが来たときも、結局カメラマンに追われてしまいました。以前旧小見川町にマナヅルが来た時や、印西市にソデグロヅルが来たときには地元の人達が協力してカメラマンから守ることに成功しましたが、こちらでは対策を立てる前にいなくなってしまい残念でした。私も写真を撮るので偉そうなことは言えませんが、今や珍鳥の一番の敵はマナーの悪いカメラマンです。

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右端に3羽のソデグロヅルが写っています。

(編集部注:ソデグロヅルGrus  leucogeranusは、世界に3800羽程しかいない希少種です。夏季にロシア北東部や中北部で繁殖し、冬季になると鄱陽湖やインド北部、イラン北部で越冬しますが、西アジアは政情が不安定なうえにツル類を狩猟する習慣もあるとのことです。)

 なお、2011年12月から翌年3月まで印西市に1羽が飛来し、河邉さんたちがカメラマンへの対応に奮闘しました。会報2012年2月号に河邉さんが概要を報告しているほか、2012年4月号には会長から「珍鳥出現対策マニュアル」が示されました。『BIRDER』2012年5月号で「千葉県野鳥の会による地元住民への対応と地元ルールの作成は未然にトラブルを防ぐことができた好事例だ。」と絶賛されます。

今回飛来した3羽は、2016年11月6日に北海道鶴居村に出現した群れで、降雪のため南下して旭市に飛来したことが分かっています。カメラマンが追わなければ越冬も期待できたのに残念です。その後、宮城県の蕪栗沼で3羽のソデグロヅルが観察されています。(河邉)
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掲載ここまで。


 この記事を読んで、2011年冬に印西市に飛来したソデグロヅルを見に行った時のことを思い出しました。人がたくさん来ていると聞いていたので、私は年が明けてから2月に何かの用事のついでに見に行きました。バードウォッチャ―は私一人でした。そして、写真の看板を見かけました。

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「ツルをはさむな。囲むな。追い立てるな。撮影不可の農道。」2012年2月撮影。

これが、『BIRDER』2012年5月号で紹介された、立入禁止区域を設けるなどのルールを設定した際の看板の一つのようです。千葉県野鳥の会が対応した具体的なルールや対策としては、大勢の人がやってくることを役場や地元住民、学校、駐在所へ説明する、撮影場所や駐車可能な場所を決める、案内看板を設置する、などです。
この対応のおかげでソデグロヅルは人に追われることなく無事に越冬できたのでしょう。

 その後、千葉県野鳥の会会報では「珍鳥出現対策マニュアル」が示されたそうですが、現在、千葉県野鳥の会ホームページでは、「千葉県野鳥の会が考える写真撮影のルール」が示されています。
http://chibawildbird.web.fc2.com/satuei2.html
ここでは、〇〇をしてはいけない、という事だけではなく、その理由も簡単に説明がされています。
珍鳥が出現した時、大勢の観察者が集まってしまうような時、
マナー違反の人を注意をする時、参考になるかと思います。

 個人的な意見ですが、マナーが悪いからといって単に注意すれば良いというものではなく、お互いの立場やその時の状況によっては、さらに事態が悪化することもあるかもしれません。注意する前に、そこがどういう場所か、マナー違反の理由をきちんと伝えられるか等、少し慎重に整理してからの方が良いかなと思います。

現地の状況によって対策は異なることもあるかと思いますが、基本は『鳥と地元の人に迷惑をかけない事』だと思います。



posted by ばーりさ at 17:00| その他