2022年07月27日

図書紹介:野生動物の法獣医学 もの言わぬ死体の叫び その1

 オンラインで開催した鳥類学大会に2年連続で参加していただき、分野横断の楽しいディスカッションを提供してくださった浅川満彦さんの著作を、出版社から寄贈いただいていたのでご紹介します。「物言わぬ死体の叫び」とサブタイトルがついていますが、僕の印象では、叫んでいるというよりは静かに佇んでいる感じでした。それを、浅川さんの博識フィルターを通してみると、みるみる色鮮やかに彼らの生きた姿が映し出される。獣医学に限らず鳥類学の現場の雰囲気が滲み出ている、とても良い本です。

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著者の浅川さんは恥ずかしがりやなのか表紙にはいない。
本屋で見つけたら、浅川さんがどこにいるか探してみよう!


少し開いてみると、体の部位や状態に関する専門用語や薬品名や法律用語などがみっちり並んでいるし、死体や解剖の写真などが並んでいて、獣医や獣医を目指している人以外にはとっつきにくい印象なので、初見でこの本の良さに気付ける人は少ないかもしれません。

ですが、読みにくそうに見えて、実はテンポよく簡潔に書かれていて、スイスイ読めます。短い節の中で鳥に関するいろいろな(しかも生態や行動についての本では得られないような)知識が身につくし、鳥の死骸から何が読み取れるのか、そこからどう推理するのか。どこか推理小説のような味わいもあります。そして、きまって節の後半になると文体が崩れてきて、著者の身の回りの出来事や学生を育てる指導者の独白とか、ふっと笑ってしまうユーモアが顔を出します。「ここからは、まったくの想像」と著者の考えが披露されるあたりは、事実をひとつずつ押さえながら真相に迫る前半とはまるで違い、そのギャップも楽しいです。死体の写真が苦手でなければ、ぜひ多くの方に読んでもらいたい一冊です。


■ キクイタダキ 餓死かどうかは大事なチェックポイント
 少し本書の内容を紹介します。日本で最も小さい鳥のひとつであるキクイタダキが11月釧路市の住宅街でカラス窓の下に落ちていたところを拾われ、釧路市動物園に運び込まれ例です。著者は、まず外見を見て羽の状態を確認し(そこでこの個体は幼鳥と判断)、口腔内を確認して、次いで解剖によって分かった所見が簡潔に列記していきます。このキクイタダキは皮下脂肪の蓄積が十分あったので飢え死にの線はなくなりました。口腔内の出血、肺挫傷、静脈系うっ血があり、外部から強い衝撃を受けたと判断され、状況から判断して、窓ガラスへの衝突による死亡と結論づけられましたが、話はそこで終わりません。皮下脂肪の状態は胸のところで確認するのですが、脂肪が蓄積する順序にはルールがあり、鎖骨、竜骨突起(胸の中央、縦一本の胸骨のでっぱったところ)、腹部へと頭側から順に脂肪は蓄積していき、蓄えた脂肪を消費するときは腹部から蓄積した時の逆の順に消費されていくという解説も展開されます。読者の皆さんが死亡個体の剖検を求められることはまれだと思いますが、こうした知識を知っておくことは、鳥を保護した時や、生態の研究でも役に立つと思います。

その2へ続く



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posted by ばーりさ at 16:07| 書籍紹介

2022年06月28日

美しい鳴き声が聞こえる日本の野鳥図鑑 保存版

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美しい鳴き声が聞こえる日本の野鳥図鑑 保存版
里中遊歩 監修 宝島社

表記書籍に,鳴き声図鑑で音源協力しました。
前回,協力した「身近な鳥」に続き,種数を増やしたものも作りたいということでご協力しました。1320円と手ごろな価格でこれだけの種数が掲載されています。たくさんの種を詰め込んでのこの価格ですので,1種1種の解説は,通常の図鑑のように詳しくはありませんが,書店などで見かけたら,手に取ってみてください。

posted by ばーりさ at 16:49| 書籍紹介

2022年04月30日

日本書紀の鳥 山岸哲・宮澤豊穂 著 京都大学学術出版会

著者の山岸さんから,表記書籍いただきました。ありがとうございました。

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学術選書 104 日本書紀の鳥

山岸哲・宮澤豊穂 著
京都大学学術出版会
四六並製・286頁
ISBN: 9784814004058

日本書紀に出てくる鳥の話題の紹介とそれにまつわる鳥の話題や種の情報などを読むことができます。

きっと,古文の授業でやったのだと思いますが,まじめな生徒ではなかったので,日本書紀というものがあることは知っていましたが,こんなに鳥のことが出てくるの知りませんでしたし,その話題も下ネタというか,下世話なというかそんな話も多いの知りました。鳥の話題の中に日本書紀の話をまじえたら,ちょっと賢そうに聞こえますよね。「賢そう」な人になりたい人はぜひ読んでみてください。また,今の鳥の話題の方も,ぼくは知らなかった情報(昔の論文や応用生態工学系のもの)もあって,よいインプットにもなりました。



posted by ばーりさ at 16:51| 書籍紹介

2022年04月04日

あした出会える野鳥100

著者謹呈ということで,以下の書籍が届きました。柴田さんですかね,菅原くんですかね,ありがとうございました。

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散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100

柴田佳秀(文) 菅原貴徳(写真) piro piro piccolo(イラスト)
本体1,600円+税10%
山と渓谷社


身近な野鳥を厳選した初心者向けの図鑑です。
イラスト図鑑と写真図鑑の良いとこどりを狙っているのでしょうね。
最初に掲載されている100種が陸の鳥と水鳥にわけてずらりと並んでいるページがあるのですが,そんなところはイラストのよいところで,載っている鳥を概観できて楽しいです。

書店で手に取ってみてください。
posted by ばーりさ at 14:03| 書籍紹介

2022年01月05日

『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017』などを頂きました

日本野鳥の会山口県支部より、『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017』、『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017(種別解説編)』、『山口野鳥 第52号』を頂きました。
山口県支部では、1990年、2008年にも鳥類の繁殖分布調査報告書を作成しており、2016年と2017年の今回が3回目の調査報告です。
国土地理院の2万5千分の1地図を縦横に等分してサブメッシュを作成し、315サブメッシュでラインセンサスによる現地調査を実施して、過去2回の調査との比較をされました。
『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017(種別解説編)』には、種ごとに山口県における生息状況やその変化、繁殖例などの非常に充実した記録がまとめられています。全国鳥類繁殖分布調査では収集されきれなかったと思われるデータも多く載っており、地域に密着して鳥を観察する人、その記録をまとめる人の距離の近さと層の厚さを感じました。

個別の種では、全国の傾向と同じくソウシチョウやガビチョウの分布拡大が見てとれました。山口県は西日本の中ではソウシチョウの拡大が遅く、ガビチョウもまだ遠い存在だったのですが、ついに入ってきて増えているようです。山口県出身の私としても、馴染んだ音環境が変わっていくのだろうかと心配になりながら読みました。

『山口野鳥 第52号』にはいろいろな鳥の報告などが載っていますが、特に山本尚佳さんの「生態写真の撮影にハマった!」や調査研究部による「続 頭かき図鑑」が面白くてご紹介します。
「生態写真の撮影にハマった!」は、野鳥観察から入って撮影も始められた山本さんが、警戒されない距離でじっくりと鳥を観察しながら、鳥が見せてくれるいろいろな行動を撮り溜めたものです。潮汐に合わせて「休息」のタイミングで撮影したものや、マガンとシジュウカラガンがいがみ合っている「異種間の争い」など、ゆっくりと鳥をみる面白さが詰め合わせになったような内容でした。
「続 頭かき図鑑」は、いろいろな鳥が頭をかいている写真がひたすら掲載されているページです。ここでは、普通に頭をかく「直接頭かき」と、翼越しに頭をかく「間接頭かき」について、どの分類群の鳥がどんなかき方をするかをまとめてあります。写真もたくさん掲載されていて、写真を見比べるだけでも楽しいものです。こうした記録は、山口県支部野鳥観察データベースに掲載されているものから抽出されたものだそうで、他にも色々な行動が掲載されているようです。こんなに充実したデータベースがあるのかと驚きました。

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posted by ばーりさ at 14:26| 書籍紹介