2019年06月05日

【みにクル】高山帯鳥類調査 in 富士山植林地 調査後、梨ヶ原高原へ(山ア)

 富士山での植林地の調査とデータ集計が終わった後、調査にご協力頂いた皆さんと一緒に梨ヶ原高原で草原の鳥を観察してきました。植林地の調査の報告については、こちらをご覧ください。

http://blog.bird-research.jp/article/186093365.html


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毎年みられるわけではないと聞いていましたが、到着してすぐにオオジシギのディスプレイフライトをじっくり楽しむことができました。さえずりながら飛ぶヒバリのほか、ホオアカやコムクドリなども観察することができました。

 ホオアカ.jpeg

 また、モズがカッコウを追い払おうとしているところも観察しました。モズの巣が近くにあったのかもしれません。モズに限らず鳥は自分よりもずっと大きい相手に対しても立ち向かっていきます。私は武道をやっていたことがあるのですが、相手が自分より大きいと、投げるのはとても大変でした。それを思うと「鳥ってすごいな」と感じます。


しばらく観察した後、車で移動し観察場所を変えたところ、今度はノビタキに出会いました。

ノビタキ.jpeg

観察場所を変える前、参加された皆さんと「ノビタキに会えないと帰れない!」なんて話をしていましたので、観察できてよかったです。


出現した鳥や調査場所の植生などを記録して比較することで、観察だけでは気づかなかったことが分かることが調査の面白さの1つだと思います。時間をかけてじっくり鳥を見て楽しめるバードウォッチングには、バードウォッチングの良さがあると思います。調査とバードウォッチングの両方を1日の内に体験し、双方の良さやその違いを感じることができました。


ご参加頂いた皆さま、ありがとうございました!

また一緒に調査やバードウォッチができる日を楽しみにしています。

posted by ばーりさ at 09:55| みにクル報告(富士山)

2019年06月04日

【みにクル】高山帯鳥類調査 in 富士山植林地(6月1-2日)(高木・山ア)

 先日、関東圏の会員の方たちと共に富士山北部の植林地にて調査を実施してきました。今回もLASP富士山鳥類調査研究グループ(LASPFG)との共同での調査です。例年は100m標高毎に調査を行ない、垂直分布を調べていますが、今年は標高1300〜1700mほどの一定の標高の植林地で、樹木がある場所と伐採地の違いを調べました。
 6月1日の昼過ぎに東京を出発し、中央高速で山梨県へ。談合坂サービスエリアでツバメのヒナたちを観察したあと、調査地の近くの民宿に向かいました。そこで、現地集合組の参加者と合流し、近くの森に入って調査方法のレクチャーを行ないました。今年は、森林環境の違いを調べて比較する、ということもテーマとしていましたので、その方法についても学びました。そして、温泉から富士山を眺め、夕食後に1時間ほど座学を行ないました。
 富士山植林2019-side1.JPG

 翌朝は3時半に出発し、調査地の近くの森へ。夜明けのコーラスを楽しんだら、植林地に入って調査開始です。スタッフ3名、参加者は13名、車3台体制で調査が始まりました。9時終了予定を10時半まで延長して15地点を2班にわかれて2回ずつ調査しました。調査地には大きく分けて、森林(シラビソやカラマツなどの自生種を植えていて、下草の手入れなどは過剰にしていない天然林に近い管理の植林)、帯状伐採地、皆伐地(伐採直後の場所や次の苗木を植えてある場所もありました)の3つの環境があります。鳥の調査は半径約50mのスポットセンサスで行ない、環境については、地上から樹冠までいくつかの層に分けて植被率などの記録を交代でつけました。
富士山植林2019-side2.JPG
 
 調査後は民宿に戻って昼食をとり、みんなで調査結果の取りまとめを行ないました。出現した鳥の種数は、森林29種、帯状伐採地26種、皆伐地14種でした。皆伐地は草などが生えた草原に近い環境ですが、天然の草原や高原とは違いがありました。皆伐直後の場所はほとんど草原性の鳥もおらず、林縁でハシブトガラスが騒いでいる程度。伐採から数年経った場所でも草原性の鳥は限られていて、むしろ森林性の鳥が記録されました。これは、伐採されている場所の面積が100〜150m四方のパッチ状で小さく、調査範囲に伐採地の隣の樹木が含まれていたことによります。草原とは違う伐採地の特徴として、あえて林縁を除外しませんでした。調査の直後にデータのまとめをすることで、同じような景観でもその広さによって生息する鳥の種類が変わることを実感できました。長時間の調査はかなりシンドイものです。でも、帰りの車や、その後のメールなどから、とても充実した時間だったと喜んで頂けている様子が伝わってきます。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
植林地航空写真CCB20101-C6B-30s調査イメージ.jpg
森林(緑)、帯状伐採地(青)、皆伐地(赤)を上空から見たときのイメージ。調査地周辺の航空写真(2010年撮影)より。この航空写真は調査地から少し外れた場所のもので、調査時の実際の状況を示したものではありません。また、円の大きさは半径50mの円と植生の関係のイメージですが、実際の広さとは無関係です。皆伐地では、このように林縁が調査範囲に含まれていたため、樹上にとまっていたアオジやビンズイなども記録された。

 バードウォッチングに出かけるとき、環境の違いを意識して記録をつけておくと、新しい発見があるかもしれません。調査の記録をつける際、手軽に使えるツール、さえずりナビの「フィールドノート機能もぜひ使ってみてください。6月16日まではこの機能を利用したバードソンも実施しています。

参加者の一部は解散後、梨ヶ原高原にバードウォッチングに行きました。
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posted by ばーりさ at 15:25| みにクル報告(富士山)

2017年06月26日

【みにクル】高山帯鳥類調査 in 金峰山麓(6月3-4日)

 毎年、富士山で実施してきた鳥の垂直分布を調べる調査ですが、今年初めて、富士山以外の場所で実施しました。富士山から北に約60km、山梨県北部に位置する金峰山麓です。今回もLASP富士山鳥類調査研究グループ(LASPFG)との共同での調査です。乙女湖の少し下(標高1400m)から、自動車で登れる峠としては最も高い位置にある大弛峠(標高2350m)の区間を標高100mごとにスポットセンサスするのが目的でした。
 関東在住の会員の方に調査への参加を呼びかけたところ、思っていたよりも大勢の方から参加したいとご連絡をいただきました。ありがとうございます。事前に調査地点などの下見をしたところ、車を停めておける車道わきの待避場所が狭く、全員の方をお連れすることができませんでした。お断りしなければならなくなってしまった方には申し訳なく思っています。2台の車に詰めて乗れるだけ乗ってもらって、スタッフ2名と参加者10名で実施してきましたので、ご報告します。
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乙女湖から望む金峰山
 
 6月3日、お昼過ぎに調布を出発し中央高速で西へ。甲州ワインの里、勝沼ICで高速をおりて目的地にひた走りました。そして夕方、調査地に着いたあとは標高1700mぐらいの林内で調査方法の練習をしました。調査では、鳥がいる場所までの距離や、鳴いている方角、さえずるタイミングなどから、何羽いるのかを捉える必要があります。普段のバードウォッチングとは、意識することが違うので、それを体験して明日に備えます。
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 練習の後は、乙女湖のそばの民宿で夕食をとり、借りた部屋の一室で山の鳥の声について座学をしました。用意したパワーポイントは、もとは視覚障害者向けに作ったスライドでしたので、あんまり話が簡単だと飽きてしまうと思い、最後にちょっと難しいクイズを用意しました。富士山の5合目の夜明けに録音した音源です。どの鳥も一斉に鳴きだして声が重なり合っているような音の中から、5種の声を聴き分けて、どの鳥が鳴いているか当てるというクイズです。(挑戦してみたい、という方は、音源のリンクをクリックして、再生してみてください。登場するのは山にいる一般的な鳥です。)珍しい鳥の名前をさえずりで言い当てるという類の難しさではなく、調査につながる出題をと思って用意しました。
 翌朝は早いので、座学の後はお風呂に入って9時には就寝しました。
 
 昨年、一昨年の富士山はあいにくの天気続きでしたが、今年の調査日は晴天に恵まれました。日の昇る前の薄暗い中、装備を整えて出発します。4人と8人の2班にわかれて車に乗り、同じ地点を両方の班が調査するようにしながら、1400mから100mずつ登っていきます。同じ地点を少し時間をあけて2回調査することで、より正確にそこにいる鳥を捉えていきます。富士山ではほとんど記録されないコマドリが標高1600mから2000mにかけてのササ薮にびっしりいたり、逆に富士山では5合目まで広く記録されるキジバトがほとんどいなかったり。昨年までの富士山の調査にも参加されていた方も多く参加いただいていたので、山による違いも感じてもらうことができました。
 調査終了後はとりまとめです。民宿に戻って朝食をとって一服したあと、宿に貸していただいた広間に集まりました。同じ地点を2つの班で調査したので、調査後にその突き合わせをして、どの標高でどの鳥が鳴いていたかを、エクセルの表をスライドに映写しながらまとめていきます。昨年の富士山の結果とも比較していくと、場所によって違う鳥がいる一方、場所が違ってもほぼ同じ標高で出現する鳥がいることもはっきりと見えてきました。
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調査結果のまとめのようす。画面が少し歪んで見えますね。
シーツを洗濯ばさみで吊るした手作りスクリーンです。

 早朝からお昼まで濃い1日でしたが、良い調査成果が得られましたし、参加者の皆さんにも楽しんでいただけたようでほっとしています。調査へのご参加ありがとうございました。

また来年も企画したいと思います。

高木憲太郎
posted by ばーりさ at 15:04| みにクル報告(富士山)