2023年07月13日

『クマタカ生態図鑑』を献本していただきました(守屋)

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クマタカは国内に生息する森林性の大型猛禽類です。黒っぽい精悍なタカですが、翼が丸く愛らしくもあります。年に一度は観察しておきたくて、山の方に行くことがあります。短時間でも出会えるとうれしい鳥ですよね。

今年3月に刊行された『クマタカ生態図鑑』(著:若尾親、監修:山崎亨、平凡社)が、重版となったそうで献本していただきました。
クマタカに関することを徹底的に解説との通り、目次を見ると各部位の名称から、クマタカの概要や生態、食性、繁殖生態、行動、保全など関連するこれまでの知見が、全26章に記載されています。各章には、生態や行動の豊富な写真が添えられ、分かりやすい構成になっていて、また眺めているだけでも写真集のような楽しさがあります。
現在のクマタカのことを一から知ることができ、特に鳴き声と行動との関係、換羽、幼鳥の成長過程などは、今後調査や研究を行う人にとって役立つ情報でしょう。これを基盤にまた新たな知見が重なってゆくのではないかと思いました。

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B5ぐらいの大きさで、厚さが3pほど。
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posted by ばーりさ at 15:42| 活動報告

2023年07月07日

タマシギの鳴き声調査(守屋)

日本国内で繁殖するタマシギのモニタリング調査を行うため、各地の調査参加者を募集しています。


昨夜は、タマシギの鳴き声を確認しに、バードリサーチ会員の大井さんと某水田地帯に行きました。そこは、何年か前に昼間に観察したことがある場所で、6月下旬にも調査したのですが、その時は鳴き声の確認はできませんでした。

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20:30集合、あたりは暗いですが街の光があって、真っ暗闇というわけではありません。
微風で雨もありません、前回は雨上がりもあってかカエルが、かなり鳴いていました。しかし今回は曇っているものの湿度も高くなく、それほどカエルは気になりません。声を聞くには好条件。

調査は、定点で6分間耳を傾けます。集中しているとあっという間ですが、カエルの声やバンの声はするもののタマシギの声は録れず...。500mほど離した定点を3つ行いましたが、いずれも録れませんでした。

結局、2回目も確認できませんでした。一晩中鳴き続けることもあれば、ダメな場合もあるようで、繁殖期中のタイミングもあるかもしれません。

繁殖環境が変化していなくなっていないことを祈りつつ、3回目は7月下旬ごろに再チャレンジします。

posted by ばーりさ at 12:17| 活動報告

2023年06月30日

農地ぷらぷら調査(高木)

バードリサーチでは、いろんな環境のモニタリング調査を実施していますが、農地の鳥をモニタリングはシギ・チドリを除くとメニューにありません。海外も含め、農地の鳥の減少はいろんなところで言われてきていますし、これからも日本の農業は変わっていく気配を感じます。耕作放棄地がメガソーラーに置き換わるなどの変化も、まだ続くと思います。そんなわけで、ちょっと、農地の調査の検討のため、先日、あちこち回って試しの調査をしてきました。

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6月も終わりでしたので、繁殖が終わった鳥たちのさえずりは下火。そのため偏りはありますが、今回の調査では、周辺に樹木や林があればホオジロやウグイス、シジュウカラなどが、川や水路があるとカルガモやカワセミが記録されました。宅地が近いとスズメやツバメが多いなど、「そうだよね」という結果を調査票につけながら、調査地点の設定の仕方や調査方法について考えをめぐらしてきました。
メガソーラーの設置された場所でも調査をしてきました。さすがにヒバリやオオヨシキリは記録できないものの、周囲などに草木があったり、下草刈りをほどほどにしている鳥たちにやさしい?メガソーラーだと、種数自体はそれほど農地とは違いはありませんでした。

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調査を行った場所のうち4か所における10分スポットセンサスで記録された種数の比較

今回は、調査のしやすさなどを考えて、車で移動しながら、10分のスポットセンサスを試しました。ですが、周辺環境の影響、パッチ状で季節や年によって変化する植生、大きく移動する記録率に波のある種の影響を考えながら、普通にやったらだめだなぁ、という実感をもって帰ってきました。もうちょっと調査しながら、手立てを考えてみようと思います。
日の目を見ることはあるでしょうか?
posted by ばーりさ at 14:47| 活動報告

森の鳥の聞き取り調査,3か月の調査が本日終了

埼玉県秩父,富士山中湖,長野県志賀高原,北海道富良野を日替わりで聞き取る森の鳥の聞き取り調査。本日で3か月の調査が終了しました。参加者はレギュラーメンバーが6名でプラスアルファという感じで実施していました。参加いただいた皆様,お疲れ様でした。

今年のトピックスは以下のような感じでした。

埼玉県秩父
シカの影響で下層植生がほとんどない調査地ですが,近年,ウグイスが聞かれたり,コルリも聞かれる機会が増えるなど,下層植生を利用するような鳥が,徐々に増えている傾向がありました。ただ,今年はその傾向が,元に戻ってしまったような感じで,ウグイスも1回しか聞かれず,コルリの頻度も低い状況でした。

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秩父でのコルリの記録頻度。赤が今年の結果

一時的な揺り戻しなのか,この傾向がなくなってしまったのか,来年以降も注意して聞いていこうと思います。なお,それ以外の傾向としては,メジロなど暖かい地域の鳥の増加がありますが,この傾向は進んでいるようでした。

富士山中湖
ホトトギスがあまり聞かれなかったのが,気になったところでした。

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山中湖でのホトトギスの記録頻度。赤が今年の結果

山では減少傾向にあり,ウグイスの減少と関連していると考えられていますが,ここでもシカを見る頻度は増えているものの,ウグイスの減少はそれほど顕著でもないので,同じような状況にあるのかはわかりません。マイクのある場所は道のすぐわきでシカの影響が出にくい場所ではあるので,もっと森の中の方はウグイスの減少が顕著で,それがホトトギスの減少に影響しているのかもしれません。そういうところは,1点のみのモニタリングの弱点かもしれませんね。

長野県志賀高原
今年はクロジのソングポストがマイクのそばにあったのか,さえずりが良く聞こえたのが特徴でした。ただ,距離が近かったので,そんな印象を持つだけで,特に例年と頻度が違うわけでもないですね。

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志賀高原でのクロジの記録頻度。赤が今年の結果

また,6月下旬になってから,調査終了間際の時間帯に,毎回エナガの家族がやってくるのが印象的でした。エナガの群れに囲まれている感じは,無人マイクでないとできない経験でした。



北海道富良野
富良野のマイクが不調で,6月はじめで聞き取りができなくなってしまいました。ちょうどその頃にヒガラが例年と違い,ほとんどさえずりが聞かれなくなってしまっていたので,何が起きているのか(あるいは,たまたまさえずらない日があっただけなのか)知りたかったのに,残念でした。来年は復活してくれることを願います。

それ以外の主要種のさえずり頻度はこちらから聞くことができます。
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/forest/hikaku.pdf

来年も4月1日から実施する予定です。ホームページなどで告知しますので,興味のある方はご参加ください。


posted by ばーりさ at 11:48| 活動報告

2023年06月14日

さえずりはだんだん下火に

4月から続けてきた森の鳥の聞き取り調査もあと半月で終了です。
さすがに6月も半ばになると,鳥たちもさえずりモードから子育てモードへとシフトしていて,さえずりはだんだん下火になってきています。

いつも元気でさえずっているヒガラでさえ,こんな感じ。赤線が今年のさえずり頻度。縦軸がさえずり頻度,横軸が季節の推移,右下がりになっていて,さえずりが不活発になってきているのがわかります。
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標高の高い志賀高原はほかの地点よりは活発ですが,それでもじりじり下がってきています。

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そんな中,元気なのがクロジ。
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例年だと下がってきて良いのですが,盛り上がってきています。先日の佐渡の記事では増加しているかも,と,植村が書きましたが,志賀高原でも増加していて,ライバル増加で活発にさえずるようになっているのでしょうか?

来年以降も同じパターンになるのか,モニタリングを続けていきます。

posted by ばーりさ at 10:20| 活動報告