バードリサーチでは,環境省のモニタリングサイト1000調査と連携して,北海道の3か所の演習林に協力をいただき,ICレコーダを設置して鳥のさえずり時期の調査をしています。
毎年この時期は,7月に回収したICレコーダの聴き取り作業をしているのですが,その聞き取りが終わったので,これまでの結果をまとめてみました。ちょっと興味深かったのが,最近,ゴジュウカラのさえずりが不活発になる時期が早くなっていることです。
図の赤い線が今年のさえずり頻度の季節変化で,オレンジが2022年,ピンクが2021年…と色のついているのが最近の記録で,灰色が2017年以前の結果ですが,雨龍はそれほど顕著ではありませんが,色のついた線が早くからさえずり頻度が低調になり,灰色の線が高く推移しているのがわかります。つまり最近は早い時期からゴジュウカラのさえずりが不活発になることがわかります。
それが影響して,4/26-30,5/1-5,…のように期間別にさえずり頻度の年変動を見ると,早い季節では,以前も最近もさえずり頻度に違いがない(―印)のに対して,遅い季節には,年々さえずり頻度が減少している傾向にありました。
活発にさえずる早い季節(4/26-30)に減少傾向はなかったので,おそらくゴジュウカラの生息数に大きな変化はないのだと考えられます。しかし,気温などの影響で,近年は早い季節にさえずりが不活発になる傾向があり,その結果として,遅い季節にはゴジュウカラのさえずり頻度が経年的に減少しているような傾向になっているのだと思います。
こうしたことは,モニタリングサイト1000の現地調査の結果にも影響しているかもしれません。現地調査では,さえずり頻度ではなく,1回でも鳴いたら1羽と記録されますし,何回鳴いても同じ個体だと認識したら1羽と記録されるので,影響はマイルドになっていると思いますが,鳴き声での記録が多いので,それでも(本当の生息数は変わっていなくても)記録上,数が減ったように見えてしまう可能性もあり,今後の現地調査の結果の評価でも気に留めつつ,引き続き情報収集をしていきたいと思います。