2023年09月05日

最近ゴジュウカラは早くさえずりを止める

 バードリサーチでは,環境省のモニタリングサイト1000調査と連携して,北海道の3か所の演習林に協力をいただき,ICレコーダを設置して鳥のさえずり時期の調査をしています。

 毎年この時期は,7月に回収したICレコーダの聴き取り作業をしているのですが,その聞き取りが終わったので,これまでの結果をまとめてみました。ちょっと興味深かったのが,最近,ゴジュウカラのさえずりが不活発になる時期が早くなっていることです。

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 図の赤い線が今年のさえずり頻度の季節変化で,オレンジが2022年,ピンクが2021年…と色のついているのが最近の記録で,灰色が2017年以前の結果ですが,雨龍はそれほど顕著ではありませんが,色のついた線が早くからさえずり頻度が低調になり,灰色の線が高く推移しているのがわかります。つまり最近は早い時期からゴジュウカラのさえずりが不活発になることがわかります。

 それが影響して,4/26-30,5/1-5,…のように期間別にさえずり頻度の年変動を見ると,早い季節では,以前も最近もさえずり頻度に違いがない(―印)のに対して,遅い季節には,年々さえずり頻度が減少している傾向にありました。
 活発にさえずる早い季節(4/26-30)に減少傾向はなかったので,おそらくゴジュウカラの生息数に大きな変化はないのだと考えられます。しかし,気温などの影響で,近年は早い季節にさえずりが不活発になる傾向があり,その結果として,遅い季節にはゴジュウカラのさえずり頻度が経年的に減少しているような傾向になっているのだと思います。

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 こうしたことは,モニタリングサイト1000の現地調査の結果にも影響しているかもしれません。現地調査では,さえずり頻度ではなく,1回でも鳴いたら1羽と記録されますし,何回鳴いても同じ個体だと認識したら1羽と記録されるので,影響はマイルドになっていると思いますが,鳴き声での記録が多いので,それでも(本当の生息数は変わっていなくても)記録上,数が減ったように見えてしまう可能性もあり,今後の現地調査の結果の評価でも気に留めつつ,引き続き情報収集をしていきたいと思います。

posted by ばーりさ at 14:37| 活動報告

2023年08月24日

日本野鳥の会島根県支部で講演をしました

8月19日(土)に、日本野鳥の会島根県支部の室内探鳥会で、『NPO法人バードリサーチの活動〜データで守る野鳥〜』としてzoomをつかって講演をしました。
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バードリサーチで行っている季節前線、モニタリングサイト1000、ホシガラスやイワヒバリの調査、食性データベースの紹介や、それらの調査でわかってきたこと、データの活用事例をお話しした他、野鳥データベースField Noteでできることや使い方の説明、TORI quizなどの紹介をしました。特に、色々な調査で収集しているデータの管理について聞きたいと事前にお話がありましたので、それに関連する内容を盛り込みました。
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島根には調査や観光で何度も訪れたことがあるので、そこでとった観察記録の紹介もしました。下図は食性データベースに寄せられた情報です。島根県からは14件の記録が来ています。島根県内の真ん中にある点は私が三瓶山で調査をしたときに観察したクロツグミの記録。
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会場からのご質問もたくさんいただき、ありがたかったです。

講師として声をかけてくださった日本野鳥の会島根県支部の皆様、ありがとうございました!
posted by ばーりさ at 12:20| 活動報告

2023年08月05日

ちょっと変わったイワツバメの巣

うちの嘱託研究員のSimbaが,イワツバメの巣の写真を送ってくれて,変わった巣だったので,朝のサイクリングのルートをちょっと変えて見に行ってきました。

こんな巣です。ツバメの巣のように,上があいています
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普通のイワツバメの巣はこんな感じで,天井のすぐ直近につくられ,上まで泥で覆われていて,隙間からイワツバメは
出入りします。
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この巣があったのは,中央道の高架下なのですが,外に近い場所は,両側とも普通のタイプのイワツバメの巣が作られていて,奥の方だけに上があいた巣が作られていました。
外に近い場所は,カラスに襲われることも多いので,襲われにくい天井直下につくられていて,奥の方は,カラスがあまり入ってこないので,カラス対策よりは,とっかかりがあって,巣が安定して作れる下の方に巣をつくるので,上があいているとかだと面白いなぁと思いましたが,このくらい幅の高架だと,奥の方にカラスが入って来にくいということはなさそうなので,違うでしょうね。


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こうした調査や通勤に30年かそれ以上乗ってきた愛車ですが,まもなく,さようならします。加速するとフレームが軋むようになってきてしまっていて,そろそろ寿命かな,と。来週,新車がやってきます。自転車屋さんは,今のロードは別の乗り物ですよと言っていたので,楽しみです。

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posted by ばーりさ at 09:31| 活動報告

2023年08月03日

夏の暑さで記録枯れ?

暑い日が続きますね。
今月の食性データベースを更新して、記録数を集計してみました。7月はなかなか記録が増えないなぁと日々見ていたのですが、今月は40件の記録にとどまりました。
ここ半年間の記録数はこんな感じです。
食性記録数202303–08.png

春先は食性データベースに限らず色々な調査の記録をたくさん送っていただけるのですが、暑すぎるためか、夏にはガクンと少なくなる傾向があります(2月も少ないですね、寒さも効いてる?)。

記録件数が最も多いヒヨドリについて、記録件数と餌の内容(動物/植物)を見てみました。やはり夏の記録はまだまだ少ないですね〜!どこにでもいるヒヨドリですが、食性についてのまとまった情報は実はこれまでにもほとんどありません。みなさんと記録を蓄積していけたらと思っています。
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ヒヨドリは標高100m未満の場所では分布が縮小、500mから1000mの場所では分布が拡大しています(バードリサーチニュース 2022年11月: 2)。分布が変化した理由はよくわかっていませんが、色々な場所や季節で餌の情報をためたら、もしかすると何か手がかりが得られるかもしれません。

この夏、登山やキャンプ、帰省や旅行などでいつもと違うところに行ったときには、餌を食べている鳥の行動にも注目してみてください!もちろん、庭にくるヒヨドリが食べた餌のような、身近なところでの記録もお待ちしてます〜!
投稿写真も募集中
posted by ばーりさ at 17:23| 活動報告

2023年07月26日

秩父演習林から巣箱を回収:ヤマガラの繁殖時期調査

秩父演習林から,春に設置した巣箱を回収をしてきました。もう,全ての巣箱で繁殖は終わっていました。ふ化しなかった卵が残されているくらいで,あとは,カマドウマの城と化していました。


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孵化しなかった卵3卵が残ったヤマガラの巣。


この調査の目的は,鳥の繁殖への気候変動の影響を明らかにすることです。秩父演習林は,標高1000mオーバーの寒冷なブナ林で,こうした高標高の場所は,気候変動による鳥への影響が出やすいと考えられるので,2010年から,巣箱とそのそこに温度ロガーを設置して,ヤマガラの繁殖時期のモニタリングを実施しています。
これまでの結果で,気温に応じて,ヤマガラの繁殖時期が変わっていること,暖かく,早く繁殖を始める年にはヤマガラ繁殖に失敗する事例が増えることがわかっています。


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ヤマガラの巣立ち時期と気温の関係。暖かい年は早くに巣立つ。赤く囲った部分が今年の記録。


今年はそうした繁殖の失敗の原因を確かめようと巣箱の内部を撮影できるカメラを設置しました。失敗の原因こそわからなかったものの,繁殖状況を把握できそうなことは,前回のブログ記事で紹介しました。ただ,今回巣箱を回収して,温度ロガーのデータを見たことで,問題点も見えてきました。それは,カメラ付きの巣箱では,温度ロガーでの繁殖の把握が難しいかもしれないことです。以下が,ヤマガラが利用した普通の巣箱とカメラ付き巣箱の結果を比較したものです。通常の巣箱では,繁殖経過とともに,巣箱内の温度が高くなり,繁殖時期が明瞭にわかります。それに対して,カメラ付きの巣箱では,いつ繁殖したのか,温度ではわかりません。


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普通の巣箱とカメラ付き巣箱の温度変化の違い


原因は,カメラ付き巣箱が,カメラが入るように通常巣箱より大きくつくってあることにありそうです。設置時には温度ロガーを産座ができそうな場所においておいたのですが,ヤマガラが,端っこに押しのけてしまったようで,実際には産座の位置と温度ロガーの位置が結構離れてしまっていました。また,もう1つの可能性としては巣箱が大きいために,巣箱内部の温度が上がりにくいといったこともあるのかもしれません。後者が原因だとすると,対処方法はありませんが,前者だとしたら,ヤマガラが移動できないように,しっかりとロガーを固定することで可能かもしれません。また,巣箱サイズをカメラが入るギリギリのサイズに小さくすることも効果的かもしれません。来年に向けて,改善策を練っていきたいと思います。




posted by ばーりさ at 17:53| 活動報告