2023年12月06日

イベント開催報告「はじめよう、野鳥研究」

12月2日(土)東京都国立市で野鳥調査・研究の楽しさを広く知っていただくためのイベント「はじめよう、野鳥研究」を行いました。

イベントは、野鳥調査の概要について講義→野外でモニタリング調査体験→まとめの講義、という流れで実施し、モニタリング調査の体験を通じて、楽しみながら野鳥研究について知っていただく構成で行いました。

まず、前半の講義では、野鳥研究の中からモニタリング調査を中心にお話させていただきました。モニタリング調査は、同じ時期、同じ場所、同じ方法でデータを取り続けることで、自然環境の変化が見えてくること。また、野鳥は目視で確認できないことが多いため、鳴き声をもとに種類や数を記録することなどをご紹介しました。

IMG_8443.jpg
知っている野鳥の声について皆さまに伺ったところ、「シジュウカラの声!」という方もおり、野鳥観察ははじめてという方から、すでに観察をされている方まで幅広い方にご参加いただけたことを実感しました。

その後、谷保天満宮の周辺に移動し、モニタリング調査体験をしていただきました。
調査体験では、オナガやハクセキレイ、コゲラなどが比較的観察しやすい場所に出てきてくれて、双眼鏡で野鳥を見るのは初めてという方でも、観察できたのではないかと思います。

鳴き声:オナガ
   :ハクセキレイ
   :コゲラ


画像1.png
体験で使用した調査票(と記入例)。実際の調査ではもっと多くの項目を記録します。

IMG_2700.jpg

はじめて双眼鏡で野鳥を見る方もいらっしゃいましたが、比較的見やすいところに野鳥がでてきてくれました。

DSCN0664.JPG

DSCN0637.JPG
調査体験の終了間際には、コゲラが6羽でてきました。またジョウビタキの声も聞こえました。
アンケートでは「コゲラの背中のシマシマ模様が良い」という感想も。

調査体験終了後の講義では、9月に事前に記録しておいた同じ場所の記録と、今回の記録を比較しました。
9月にいたツバメが今回見られなかったり、9月にはいなかったジョウビタキが今回はみられたり等、季節ごとに移動する野鳥の様子を感じることができたのではないかと思います。

その後、東京都 鳥類繁殖分布調査の1970年代と2010年代の記録を比較しながら、国立周辺を中心に、増えている野鳥、減っている野鳥がいることを紹介させていただき、また、その増減から自然環境の変化を読み取れることもお伝えしました。

IMG_8451.jpg
コゲラの増加していることに驚きの声があがっていました。

※鳥類繁殖分布調査の詳しい資料はこちらからご覧いただけます。

私たちは、今回のイベントを通じて、野鳥の調査研究の楽しさをお伝えすることと同時に、継続的な調査の大切さもお伝えできればと考えていました。
このイベントで、ひとつ一つの調査を積み重ねることで、大きな変化を読み取ることができる楽しさや、大切さを感じていただけていたら嬉しいです。

最後に、このイベントはKFまちかどホール様と一緒に実施しました。そして多くの一ツ橋大学生の方と一緒にイベントを準備・実施しました。この場を借りて御礼申し上げます。

そして、ご参加いただいた皆さま、お忙しいところイベントに来ていただき、本当にありがとうございました!

続きを読む
posted by ばーりさ at 12:12| 活動報告

2023年12月01日

今年のツグミは過去10年で最早

12月になりました。去年・一昨年は,11月に初認はしていたものの,年末が近づいできて,ようやくツグミが増えてきたな〜,と感じましたが,今年は,早くから普通に見られています。11月初めに,今年はツグミ早そうだ,とブログに書きましたが,やはり早かった,という結果が得られました。

ツグミ.png

一番下が今年の結果ですが,ピークは10月の下旬(11月中旬にも2度目のピークあり)。10月中にピークが来たのはこれまでで初めてで,2015年も比較的早くからダラダラと見られましたが,ここ10年で最早な年でした。
暖かくて秋がないような年でしたので,気温だけからすると,渡来が遅くてもおかしくないように思います。ツグミは渡来当初は山にいて,徐々に平地に降りて来るのですが,山の木の実が少なかったのでしょうか? 今月中旬から山の越冬期の調査がスタートしますので,そのあたり気にしながら調査してきたいと思います。


posted by ばーりさ at 14:26| 活動報告

2023年11月19日

印旛沼のトモエガモ、今年もすでに5万羽以上

11月18日に印旛沼でトモエガモのカウントをしてきました。すでに5万羽以上が飛来しています。去年5万羽を超えたのは1月のカウントのときで、11月は2万羽(長島充さんの調査)くらいでした。トモエガモの全国総数は最近5年ほどの間に急激に増えていて、昨年は17万羽近くでした。今年はさらに多くなるかもしれません。

ただ、これほど大きな群れだと十分な食物があるかが心配です。トモエガモはいろんなものを食べるようですが、宍道湖では林内でドングリを食べているのが観察されていて、他にも山間部に多数が飛来している場所があることから、ドングリは重要な食物になっていると思われます。今年はドングリが不作で熊の出没が増えているとのニュースを見ると、トモエガモも大丈夫かなと心配になります。

IMG_1329印旛沼2023-11-18.jpg
トモエガモは遠くて撮影できず、これはオナガガモの群れ。3万羽いました。

IMG_1334かんた.jpg
ところで、いつも印旛沼に行くとモモイロペリカンのかんた君をさがします。船着き場にいることが多いです。30年近くまえに放されて印旛沼で暮らしているそうで、元気な姿を見るとほっとします。かんた君は冬になると桃色の繁殖羽になります。カワウもいま繁殖羽の個体がいるので、魚を食べている鳥は春が繁殖期とは限らないのでしょう。
posted by ばーりさ at 22:29| 活動報告

2023年11月15日

カマキリを食べるカワガラスの写真

鳥がいつどこで何を食べているのか、わかっていそうで意外とわかっていないことの多いテーマです。食性データベースは、鳥が餌を食べたという観察記録をひとつずつみなさんに登録してもらい、記録を蓄積していこうというプロジェクトです。観察による記録だけで十分で、写真は必要ありません。
ただ、ホームページやSNSでの紹介などに使うため、登録した採餌記録に関連する写真の募集も常時行っています。

その写真募集に、面白い写真が届きました。
それがこちら下指差し
kamakiri_kawagarasu.JPG

カワガラスが、川の中でぐったりしたカマキリを咥えています。

食性データベースには自由記述欄があり、そこにはこう書かれていました。
「何故か川の中にカマキリがいて、それを咥えて石に叩きつけていた」
このカマキリ、「何故か川の中に」いたわけですが、何かの拍子に運悪く川に落ちたわけでも、蝶々なんかを追いかけて水辺に来ていたわけでもないかもしれません。ではなぜ川の中にいたのか。行動を操作されてやって来たのです。他の生物に…

突然なにをSFみたいなことを
と思うかもしれませんが、本当にそういう研究があるのです。

この物語はハリガネムシという寄生虫が主人公、彼らの一生(生活史)に秘密があります。
ハリガネムシは水中で産卵します。卵はまず、カゲロウの幼虫やヤゴなどに食べられます。カゲロウの幼虫やヤゴが羽化すると陸上に上がり、このうちの一部はカマキリやカマドウマなどに食べられてしまいます。そうすると、ハリガネムシもカマキリの体内に取り入れられます。カマキリは夏の間にどんどん成長し、ハリガネムシも同じようにカマキリの体内で大きく成長します。ハリガネムシが十分に大きくなって成熟すると繁殖の準備が整うわけですが、ハリガネムシは水中で産卵するんでしたよね。道路で車に轢かれたカマキリからハリガネムシが這い出ているのをみたことがある人は想像がつくかと思いますが、あのようにハリガネムシは陸上で自由に移動することはうまくありません。それで、寄生しているカマキリの行動を操作して水に飛び込ませるのです!カマキリなどの宿主(しゅくしゅ)が水中に飛び込んだら、ハリガネムシは脱出して交尾、産卵するのです。

こんなわけで、川の中でカワガラスがカマキリを捕まえている写真は、生態系のつながりを連想させる面白い写真なのでした。
食性データベースには、カワガラスの採餌記録が他にも3件届いていました。ひとつは餌が何かは不明でヒナに給餌していたというもの、ひとつはトビケラをヒナに給餌したというもの、もうひとつはトビケラの幼虫を食べたという記録でした。トビケラもハリガネムシが寄生する昆虫です。

食性データベースでは、みなさんからの観察記録をお待ちしています!
写真は必要ありません。
投稿はこちらより。
posted by ばーりさ at 10:34| 活動報告

2023年11月07日

冬にカワウがどっとやってくる瀬戸内海に浮かぶ島

先日、広島県に呼ばれてカワウの対策検討会とねぐらの視察に行ってきました。広島県では県内を北部、南部、東部、西部の4つの管理ユニットに地域区分をして、それぞれの地域ごとに管理方針を立てています。今回の検討会では、管理ユニットごとに課題とそれに対する取り組みの方向性について議論しました。地域を区切ることで、目標や課題が明確になる効果があり、そのことが取り組みの前進に大きく寄与していると感じました。また、県の職員が自らドローンを飛ばして繁殖状況を確認しており、これによって、正確な繁殖ステージの把握→タイミングを逃さない対策ができているのも、広島県の強みです。
カワウねぐら視察in広島0.JPG

現地視察に訪れたねぐらは瀬戸内海に浮かぶ島に形成されたねぐらでした。広島県のカワウの個体数には季節変動があり、県外から季節移動でやってくるカワウのために冬季の個体数が他の季節よりも多く、特に瀬戸内海沿岸部のねぐらでその傾向が強く表れます。視察したねぐらはあまりにも冬季の個体数が多すぎて、樹木の枯死が進み、土壌流失も起きてしまっているため、ねぐらの除去に踏み切った場所です。写真のようにビニール紐*を張り、追い出した後の状況を見てきました。
カワウねぐら視察in広島3.JPG
* 注)ビニール紐は、太陽光と風によって千切れていきます。環境や生物への影響を考え、カワウのねぐら対策で使用するビニール紐は生分解性のものを使用しています。

広島県のカワウ対策におけるもう一つの強みは、市町が積極的にカワウ対策に関わっており、県と密に連絡をとって行動できているところです。今回の視察もカワウの専門家と県職員だけでなく、市町の職員も一緒でした。
市町の職員だけでなく、地元の漁協の方が定期的に見周りをされているようで、対策実施後視察に行った時点までは、カワウは戻ってきていない、ということでした。ねぐらに上陸してみたところ、確かにうまくいっていそうでしたが、少数のカワウがねぐらをとっている可能性もみられたので、引き続き警戒をして、カワウが戻ってくる兆候があった場合は、早めの対応を勧めてきました。
ここの対策はこれで良いのですが、追い出したカワウがどこにねぐらをとるのか、ねぐらの分布管理の方向性、漁業被害への対応が重要です。今後のことについても話をしてきました。
カワウねぐら視察in広島1.JPG
カワウねぐら視察in広島2.JPG
posted by ばーりさ at 14:23| 活動報告