2023年11月15日

カマキリを食べるカワガラスの写真

鳥がいつどこで何を食べているのか、わかっていそうで意外とわかっていないことの多いテーマです。食性データベースは、鳥が餌を食べたという観察記録をひとつずつみなさんに登録してもらい、記録を蓄積していこうというプロジェクトです。観察による記録だけで十分で、写真は必要ありません。
ただ、ホームページやSNSでの紹介などに使うため、登録した採餌記録に関連する写真の募集も常時行っています。

その写真募集に、面白い写真が届きました。
それがこちら下指差し
kamakiri_kawagarasu.JPG

カワガラスが、川の中でぐったりしたカマキリを咥えています。

食性データベースには自由記述欄があり、そこにはこう書かれていました。
「何故か川の中にカマキリがいて、それを咥えて石に叩きつけていた」
このカマキリ、「何故か川の中に」いたわけですが、何かの拍子に運悪く川に落ちたわけでも、蝶々なんかを追いかけて水辺に来ていたわけでもないかもしれません。ではなぜ川の中にいたのか。行動を操作されてやって来たのです。他の生物に…

突然なにをSFみたいなことを
と思うかもしれませんが、本当にそういう研究があるのです。

この物語はハリガネムシという寄生虫が主人公、彼らの一生(生活史)に秘密があります。
ハリガネムシは水中で産卵します。卵はまず、カゲロウの幼虫やヤゴなどに食べられます。カゲロウの幼虫やヤゴが羽化すると陸上に上がり、このうちの一部はカマキリやカマドウマなどに食べられてしまいます。そうすると、ハリガネムシもカマキリの体内に取り入れられます。カマキリは夏の間にどんどん成長し、ハリガネムシも同じようにカマキリの体内で大きく成長します。ハリガネムシが十分に大きくなって成熟すると繁殖の準備が整うわけですが、ハリガネムシは水中で産卵するんでしたよね。道路で車に轢かれたカマキリからハリガネムシが這い出ているのをみたことがある人は想像がつくかと思いますが、あのようにハリガネムシは陸上で自由に移動することはうまくありません。それで、寄生しているカマキリの行動を操作して水に飛び込ませるのです!カマキリなどの宿主(しゅくしゅ)が水中に飛び込んだら、ハリガネムシは脱出して交尾、産卵するのです。

こんなわけで、川の中でカワガラスがカマキリを捕まえている写真は、生態系のつながりを連想させる面白い写真なのでした。
食性データベースには、カワガラスの採餌記録が他にも3件届いていました。ひとつは餌が何かは不明でヒナに給餌していたというもの、ひとつはトビケラをヒナに給餌したというもの、もうひとつはトビケラの幼虫を食べたという記録でした。トビケラもハリガネムシが寄生する昆虫です。

食性データベースでは、みなさんからの観察記録をお待ちしています!
写真は必要ありません。
投稿はこちらより。
posted by ばーりさ at 10:34| 活動報告