2023年07月26日

秩父演習林から巣箱を回収:ヤマガラの繁殖時期調査

秩父演習林から,春に設置した巣箱を回収をしてきました。もう,全ての巣箱で繁殖は終わっていました。ふ化しなかった卵が残されているくらいで,あとは,カマドウマの城と化していました。


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孵化しなかった卵3卵が残ったヤマガラの巣。


この調査の目的は,鳥の繁殖への気候変動の影響を明らかにすることです。秩父演習林は,標高1000mオーバーの寒冷なブナ林で,こうした高標高の場所は,気候変動による鳥への影響が出やすいと考えられるので,2010年から,巣箱とそのそこに温度ロガーを設置して,ヤマガラの繁殖時期のモニタリングを実施しています。
これまでの結果で,気温に応じて,ヤマガラの繁殖時期が変わっていること,暖かく,早く繁殖を始める年にはヤマガラ繁殖に失敗する事例が増えることがわかっています。


巣立ち-気温.png
ヤマガラの巣立ち時期と気温の関係。暖かい年は早くに巣立つ。赤く囲った部分が今年の記録。


今年はそうした繁殖の失敗の原因を確かめようと巣箱の内部を撮影できるカメラを設置しました。失敗の原因こそわからなかったものの,繁殖状況を把握できそうなことは,前回のブログ記事で紹介しました。ただ,今回巣箱を回収して,温度ロガーのデータを見たことで,問題点も見えてきました。それは,カメラ付きの巣箱では,温度ロガーでの繁殖の把握が難しいかもしれないことです。以下が,ヤマガラが利用した普通の巣箱とカメラ付き巣箱の結果を比較したものです。通常の巣箱では,繁殖経過とともに,巣箱内の温度が高くなり,繁殖時期が明瞭にわかります。それに対して,カメラ付きの巣箱では,いつ繁殖したのか,温度ではわかりません。


巣箱温度.png
普通の巣箱とカメラ付き巣箱の温度変化の違い


原因は,カメラ付き巣箱が,カメラが入るように通常巣箱より大きくつくってあることにありそうです。設置時には温度ロガーを産座ができそうな場所においておいたのですが,ヤマガラが,端っこに押しのけてしまったようで,実際には産座の位置と温度ロガーの位置が結構離れてしまっていました。また,もう1つの可能性としては巣箱が大きいために,巣箱内部の温度が上がりにくいといったこともあるのかもしれません。後者が原因だとすると,対処方法はありませんが,前者だとしたら,ヤマガラが移動できないように,しっかりとロガーを固定することで可能かもしれません。また,巣箱サイズをカメラが入るギリギリのサイズに小さくすることも効果的かもしれません。来年に向けて,改善策を練っていきたいと思います。




posted by ばーりさ at 17:53| 活動報告