昨日,巣箱の回収をしてきたことをご報告しましたが,巣箱の底に設置していた温度ロガーからデータを回収しました。
鳥が巣箱を使い始めると,その体温で巣箱の中が外より暖かくなりますので,内外の温度差を見ることで,その状況を知ることができます。
今年のデータの一例はこんな感じになります。
巣材を入れただけでは,内外に温度差は出ませんが,抱卵を開始すると,少し巣箱の中の温度が高くなります。
そして,ヒナがふ化するとちょっと下がります。暖かい日は,給餌のためによく外に出るようになるし,まだまだヒナも小さいのでヒナ自身の温度もあまり高くないためと思います。
ヒナの生長とともに,ヒナの温度でぐんぐん巣箱内の温度は高くなります。しかしヒナの羽が生えそろうとその断熱効果でやや温度が下がり,巣立つと内外の温度差がなくなります。この巣の例では,5/31にヒナが巣立ったことがわかります。
こうして明らかになった巣立ち時期と今年の気候,そしてこれまでのデータを比べてみました。
これまでのデータで,ヤマガラの巣立ち時期に4月までの積算気温が影響することがわかっていましたが,それをさらに補強するようなデータになりました。
今年は2010年の調査開始から最も早く巣立ち,そして最も積算気温の暖かい年でした。早かった分,繁殖に成功した巣ではヒナ数も多かったのですが,繁殖に失敗した巣も多く,例年だと繁殖した巣の大半は成功するのですが,今年は半分の巣が失敗していました。早く繁殖する食物的な有利さの反面,急に寒い日が来た時に失敗するなど,大きなリスクも抱えることになるのかもしれません。通常,失敗しても再繁殖するので,そのリスクはそれほどでもないのかもしれませんが,秩父の調査地では,これまでの観察事例から,失敗すると再繁殖しないようです。標高が高いためかもしれません。そうすると,失敗のダメージは大きそうです。