河川が都市の鳥に与える影響についての論文も掲載されました。
繁殖期は上流ほど記録種数が多いけど,越冬期は下流ほど多いと,逆転しているのがちょっと面白い結果でした。河川が都市にあたえる影響という観点では,住宅地と河川の比較ではなくて,「河川に近い住宅地」と「近くに河川のない住宅地」とを比べた方がよりよかったかな,と思いました。
中川優奈・三上かつら・三上 修(2017)河川が都市の鳥類多様性に与える影響:函館市亀田川の事例.日本鳥学会誌 66(2): 133-143.
近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.