毎年、富士山で実施してきた鳥の垂直分布を調べる調査ですが、今年初めて、富士山以外の場所で実施しました。富士山から北に約60km、山梨県北部に位置する金峰山麓です。今回もLASP富士山鳥類調査研究グループ(LASPFG)との共同での調査です。乙女湖の少し下(標高1400m)から、自動車で登れる峠としては最も高い位置にある大弛峠(標高2350m)の区間を標高100mごとにスポットセンサスするのが目的でした。
関東在住の会員の方に調査への参加を呼びかけたところ、思っていたよりも大勢の方から参加したいとご連絡をいただきました。ありがとうございます。事前に調査地点などの下見をしたところ、車を停めておける車道わきの待避場所が狭く、全員の方をお連れすることができませんでした。お断りしなければならなくなってしまった方には申し訳なく思っています。2台の車に詰めて乗れるだけ乗ってもらって、スタッフ2名と参加者10名で実施してきましたので、ご報告します。
乙女湖から望む金峰山
6月3日、お昼過ぎに調布を出発し中央高速で西へ。甲州ワインの里、勝沼ICで高速をおりて目的地にひた走りました。そして夕方、調査地に着いたあとは標高1700mぐらいの林内で調査方法の練習をしました。調査では、鳥がいる場所までの距離や、鳴いている方角、さえずるタイミングなどから、何羽いるのかを捉える必要があります。普段のバードウォッチングとは、意識することが違うので、それを体験して明日に備えます。
練習の後は、乙女湖のそばの民宿で夕食をとり、借りた部屋の一室で山の鳥の声について座学をしました。用意したパワーポイントは、もとは視覚障害者向けに作ったスライドでしたので、あんまり話が簡単だと飽きてしまうと思い、最後にちょっと難しいクイズを用意しました。富士山の5合目の夜明けに録音した音源です。どの鳥も一斉に鳴きだして声が重なり合っているような音の中から、5種の声を聴き分けて、どの鳥が鳴いているか当てるというクイズです。(挑戦してみたい、という方は、音源のリンクをクリックして、再生してみてください。登場するのは山にいる一般的な鳥です。)珍しい鳥の名前をさえずりで言い当てるという類の難しさではなく、調査につながる出題をと思って用意しました。
翌朝は早いので、座学の後はお風呂に入って9時には就寝しました。
昨年、一昨年の富士山はあいにくの天気続きでしたが、今年の調査日は晴天に恵まれました。日の昇る前の薄暗い中、装備を整えて出発します。4人と8人の2班にわかれて車に乗り、同じ地点を両方の班が調査するようにしながら、1400mから100mずつ登っていきます。同じ地点を少し時間をあけて2回調査することで、より正確にそこにいる鳥を捉えていきます。富士山ではほとんど記録されないコマドリが標高1600mから2000mにかけてのササ薮にびっしりいたり、逆に富士山では5合目まで広く記録されるキジバトがほとんどいなかったり。昨年までの富士山の調査にも参加されていた方も多く参加いただいていたので、山による違いも感じてもらうことができました。
調査終了後はとりまとめです。民宿に戻って朝食をとって一服したあと、宿に貸していただいた広間に集まりました。同じ地点を2つの班で調査したので、調査後にその突き合わせをして、どの標高でどの鳥が鳴いていたかを、エクセルの表をスライドに映写しながらまとめていきます。昨年の富士山の結果とも比較していくと、場所によって違う鳥がいる一方、場所が違ってもほぼ同じ標高で出現する鳥がいることもはっきりと見えてきました。
調査結果のまとめのようす。画面が少し歪んで見えますね。
シーツを洗濯ばさみで吊るした手作りスクリーンです。
早朝からお昼まで濃い1日でしたが、良い調査成果が得られましたし、参加者の皆さんにも楽しんでいただけたようでほっとしています。調査へのご参加ありがとうございました。
また来年も企画したいと思います。
高木憲太郎
2017年06月26日
【みにクル】高山帯鳥類調査 in 金峰山麓(6月3-4日)
posted by ばーりさ at 15:04| みにクル報告(富士山)