
種池山荘を下から。
種池山荘は、北アルプスを形成する山々のひとつ、爺ヶ岳(標高2670m)の手前、標高約2400mの稜線にある山小屋です。標高約1300mの登山口から4時間弱かけて目的地の山小屋まで登ってきました。録音機の設置の相談だけでなく、登山者に参加してもらう調査プログラムの検討のため、登山者が山小屋でどのように過ごしているのかや、登山者の鳥への意識の程度の把握、インターネットの通信速度の確認、景観写真の撮影など、いくつか目的を持って山小屋に1泊する行程で計画を立てていたのですが・・・。

録音機設置のイメージカット
前日、天気をチェックしていると、登山予定日の午後から天気が崩れ、翌日はだいぶ強く降るようでした。そこで、急遽、朝一番で登山口を出発し、爺ヶ岳山頂への登頂をあきらめて、日帰りで下山することにしました。準備を整えて登り始めたときには、もうほとんど鳥は鳴いていませんでした。7月下旬ですから、仕方がありません。
まともな登山なんて学生時代以来していなかったので、最初の急な登りはけっこうきつく、小休憩をはさみつつ、ひーひー言いながら登りました。沢音がよく響くルートで、案の定、ミソサザイの声が聞こえてきました。ミソサザイは、沢音のするところでは、そうでないところよりも少し高い声で、シンプルに鳴きます。確かに、そのとおりだ、と思いながら登りました。きつい時に、鳥の声が耳に入ると、妙に楽になります。頭が疲労感から解き放たれて、鳥の声や関連知識のほうに意識が行くからでしょうか?
標高1800mあたりからヤマガラの声が聞こえ始めると、徐々に種数が増えてきます。1900mあたりからササ藪が目立つようになるとウグイスとヤブサメに加えて、メボソムシクイの声があちこちから聞こえてくるようになりました。(けっこう必死に登っていたので、標高は逐一細かくチェックしていませんでした。およその目安です。)

頭上数メートルの近距離からウソ、枝葉が邪魔して姿は見えず。
2000mからはルリビタキが加わり、ここから目的地の山小屋まではルリビタキ、メボソムシクイ天国でした。高山の鳥は、シーズン後半までよく鳴くと言われる通り、この時期でも、鳥の声に包まれながらの登山を楽しむことができました。登りでは、ほとんど他の登山者と出会わなかったのですが、下山の際は、多くの登山者とすれ違い、鳥の話をふってみましたが、多くの人がそれなりに意識はしているものの、ウグイスなどいくつかの種名を知っているけど、鳥の声がしても何の鳥かはわからないでいるようでした。興味を持っていそうな方には、種名を教えたり、少し生態の話をしましたが、嬉しそうにしていました(僕向けのサービス?笑)。

霧が出てきて、天気は下り坂。時間との勝負。
上り下り計8時間半の強行軍で、心配した通り、足はガクガクになりました。通常、登りの方が時間がかかるものですが、下りにより多く時間を割いてゆっくり下りたのに、です。雨にも最後の1時間、しっかりと降られましたが、それだけで済んでちょっとほっとしました。この日確認した鳥は、全部で18種。低標高でほとんど鳥を確認していない割には、種数は伸びたと思います。
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ウソ ルリビタキ
ビンズイ コマドリ
コルリ アマツバメ
ジュウイチ キクイタダキ
アオバト エナガ
メボソムシクイ ウグイス
ヤブサメ ヒガラ
ヤマガラ アカゲラ
ミソサザイ シジュウカラ
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予定していた目的の全部は果たせませんでしたが、半分ぐらいは達成でき、収穫の予備調査でした。下山後は、安曇野でお蕎麦を、と思っていたのですが、ワイナリーの案内看板に誘導されるがまま寄り道してしまい、時間が無くなったので、やむを得ず、定食屋でかつ丼を食べてシメにしました。僕は植田と違い、かつ丼が目的ではないのですが、バードリサーチブログらしく、最後はかつ丼の写真で(笑)。高山帯の鳥の調査の詳細については、おいおい、お知らせしたいと思います。
