バードリサーチでは2005年から「ベランダバードウォッチ」プロジェクトで,みなさんのご自宅周辺の鳥を報告していただいています。今回は,いつもとちょっとだけ違う視点でそのデータを見てみたいと思います。
「2番でもだめじゃないけど1番が何か知りたい」と思うこと,ありますよね。今回は,ベランダや庭にやってくる鳥の,一番の常連はどの種か,ということに着目しました。
家単位で,全調査期間を通じて出現頻度(記録回数)が1位だった鳥類種を抽出し,まとめてみてみました。同率1位が複数種観察された場合は,その複数の種をすべて含めて集計しています。
その結果,予想通り,ザ・普通種のスズメが1位を獲得しました。「常連中の常連」といえます。圧倒的1位と思われたスズメですが,なんと,ヒヨドリがスズメとほぼ同率で,カラスをも上回っていました。スズメは秋冬になると住宅地から郊外の農地のような場所へ移動する個体もいるので,そういった行動の季節変化も関係しているのかもしれません。
図1 全国で見た家での調査の出現頻度1位の鳥
では次にこれを地域別に見てみたいと思います。関東地方は,ベランダバードウォッチに参加してくださっている方が多いので,記録が突出しており,種も様々です。ですが,スズメとヒヨドリが1位をとった家が割合は,全国的に同程度で見られます。この「家」の調査は,ベランダ,庭先,縁側から見渡して,姿や声が確認された鳥を記録していますので,家や庭をふくむ周囲のごく狭い範囲に,どんな鳥が最もよくいるのか,一番普通にいるのか,ということを反映しているといえます。
図2 地域別の家での調査の出現頻度1位の鳥の比較
次にもうひとつ,「家のまわりの調査」についても同様の解析を行ってみました。こちらは,家の周囲半径200m程度に出現する鳥類を記録したものですので,環境の幅もやや広く,住宅地,公園,通勤路などが含まれます。
こちらもスズメが堂々の第1位です。調査の範囲が広がって,ヒヨドリだけでなく,カラス類やキジバトも健闘しています。カラス類は行動圏が広いので,調査範囲が広いほうが出現率が高まるのかもしれません。また,より多様な環境が含まれるためか,全体的に1位をとった種数は増えています。
図3 家のまわりの調査での全国的な出現頻度1位の鳥
では次に,地域別にみてみましょう。こちらも,関東では参加者数が多いため,データが突出しています。九州でカササギが,関東ではオナガが高頻度で確認される鳥として表れています。キジバトは図3では比較的多くを占めますが,東北・北海道では出てきませんでした。
図4 家のまわりの調査の地域別の出現頻度1位の鳥の比較
まとめますと,全体を通じて,1位はやっぱりスズメでした。これでスズメは「人家のある環境で最も普通の鳥」の称号を堂々と名乗ることができます。人家に巣を作り,子育てを行いますし,冬もその古巣をねぐらに使うこともあるスズメですので,納得です。2位は意外にもヒヨドリが健闘していました。ヒヨドリは庭木や街路樹を好みますし,餌台を置いていれば,ほかの鳥を蹴散らしてでもやってきます。また声が耳につきやすい,とう特徴がありますので,それも関係しているのかもしれません。また,スズメとヒヨドリが最頻出,という傾向が全国的に同じように見られるというのも面白いと思いました。
2015年11月11日
ベランダバードウォッチ 〜一番の常連は誰?(三上かつら)
posted by ばーりさ at 19:39| 活動報告