2021年まで行なってきた東京都鳥類繁殖分布調査では,都心部でスズメが増加傾向にあり,全体で見ても都心部の方がスズメが多いという結果が出ました(地図の右側の方が都心部)。
以前実施した「子雀ウォッチ」では,都心部のような農地が少ない場所では,巣立つヒナ数が少ないことが明らかにされていて,その結果と矛盾するような気がします。
もしかすると,採食場所が限られる都心部では,公園などにスズメが集中し,そのような場所をセンサスコースとして積極的に調査しているので,実際以上に個体数を過大評価しているのでは,と考え,そんなことがあり得るのか,都心部と郊外部でスズメの巣の数をかぞえてみました。
郊外の調査地はバードリサーチ事務所周辺の国立。
緑地も結構多く,減ってしまいましたが,畑なども点在しています。
都心部の調査地は大塚駅周辺。緑地やお墓などありますが,国立と比べると,やはり自然度はかなり低いです。
3次メッシュを1/4に区切った500mメッシュをつくって,調査コースと一致する場所についてくまなく歩いて巣を探しました。三上(2008)の簡易版的な調査です。
巣は古い家や古い鉄骨のパイプ状の場所つくられている場所
もありますが,都心,郊外問わず,そのほとんどは電柱で,特にこの写真に写っているバケツ状の変圧器の下につくられていることがほとんどでした。
で,結果はというと,都心部でスズメが多いのはセンサスによる過大評価ではなく,本当に多いようでした。
グラフにするとこんな感じ。
大塚周辺はセンサス個体数は多かったのですが,巣の数も3倍以上と明らかに多く,変圧器のある電柱にはかなりの確率でスズメが営巣していました。調査した時点では営巣の気配のない変圧器も,巣材が見えたりして,過去には繁殖していた場所も多くありました。巣立ちヒナ連れの家族も4家族いたので,調査時期がやや遅く,実際はもっと差があったのかもしれません。
もうちょっと追加調査ができたらより良いですが,センサス結果は信用しても良さそうなので,今後は郊外と都心部の繁殖状況の比較などについても情報収集していきたいと思っています。
また,スズメではないですが,ムクドリは都心部は郊外より圧倒的に少ないのも印象的でした。電柱に巣をつくれないために巣穴がないということも,スズメはちょっとした植え込みで採食していましたが,ムクドリはそれでは不十分という採食環境の問題と,どちらもありそうですけど。
2023年05月29日
やっぱり多かった都心部のスズメ
posted by ばーりさ at 11:57| 活動報告