2023年05月01日

今年のツバメ初認は「西早東遅」

5月になり,ツバメの初認が落ち着いてきたので,今年のツバメの初認状況をまとめてみました。

まずは,全国の渡来状況です。
近畿以西は3月上中旬にピークが来て,中部太平洋側は中旬から下旬,関東と中部日本海側は3月下旬から多くなり,東北地方は4月中旬になってから,と,西からツバメが渡来してきている様子がわかります。
ツバメ地域別初認.png

では,今年はツバメの渡来は早かったのでしょうか? それとも遅かったのでしょうか?
全国の初認記録を集計して,過去からの結果と比べてみると,

ツバメ初認2023.png

いつがピークだかもわからないような,ダラダラとした感じの渡来で,この図からは,早いとも遅いとも言えません。2019年もダラダラ渡来していましたが,それでも3月中下旬がピークと言えたので,かなり特異な年と言えそうです。

そこで,地域別に分けて,比較してみました。
ツバメ2019-23比較.png

中部太平洋側の地域を境に,西側は渡来が早く,東側は遅かったために,日本全体でみると,ダラダラと初認が続いたということになりました。
今年の春は暖かで,桜が早く咲きましたが,開花した直後から花冷えが続いたため,それまでに渡来していた西側は早く,東側は遅いといったことが生じたのだと思います。

これから初認が進む,その他の夏鳥はどうでしょうか? 寒さの厳しくなる3月に渡来するツバメと,ベースの気温が高くなる,4月に渡来する種では,こうした反応も違うかもしれません。そうしたことを明らかにするためにも,季節前線ウォッチへの情報送信,よろしくお願いいたします。

https://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/index_kisetu_taisho.html
posted by ばーりさ at 16:50| 活動報告

今年のさえずりは,最初早かったけれど,その後,中弛みに

今年も,4月1日から,聞き取り調査を実施しています。毎朝,埼玉県秩父,北海道富良野および富士山中湖,長野志賀高原を順に聞き取りをして,鳥たちのさえずりが活発になる時期を調べています。

スタートから1か月が経過しましたが,桜の開花が早かったことからもわかるように,雪の少なさや暖かさから,今年は,最初はさえずりが早くから活発な年でした。しかし,その後寒くなって,さえずりは中弛みといった感じでした。その寒さの影響は,秩父と山中湖,志賀高原を比べると,標高の高い志賀高原で顕著で,秩父になると薄れてきて,標高が最も低い山中湖ではあまり影響がないというのが,ちょっとおもしろいところでした。
調査地別にみていきましょう。

志賀高原
まずは一番標高の高い志賀高原。
志賀高原.png

ウグイス,クロジ共にさえずり始めは,これまでの調査でもっとも早い年にあたるほどの状況だったのですが,ウグイスは平年並みくらいになり,クロジは,完全に失速してしまったという状況で,寒さの影響が顕著でした。

秩父
秩父.png

次に高い秩父では,比較的早くからさえずり始めるアカハラはスタートこそ早かったものの,その後伸び悩んで,例年よりも遅いくらいになってきてしまっています。4月後半に渡来するキビタキは,平年並みといった感じです。

富士山中湖
富士.png

山中湖はあまり,4月下旬の寒さの影響は受けていない感じで,キビタキ,センダイムシクイともに順調に活発にさえずるようになり,例年より早い状態を維持しています。

北海道富良野
富良野.png

最後が富良野ですが,こちらも多少寒さの影響を受けているようで,4月中旬に渡来するウグイスは例年より早い状況で,やや遅く下旬に渡来する夏鳥のヤブサメは平年並みという感じです。アカハラも毎年下旬に記録されるのですが,同様に平年並みという感じです。

このように,時期により暖かい,寒いが変わったりするので,早遅はなかなか一筋縄ではいきませんが,長期間データを取っていけば,いろんなパターンの年が集まってくるので,それを基に,気候変動が鳥に与える影響を考えていきたいと思います。
posted by ばーりさ at 11:56| 活動報告