日本野鳥の会山口県支部より、『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017』、『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017(種別解説編)』、『山口野鳥 第52号』を頂きました。
山口県支部では、1990年、2008年にも鳥類の繁殖分布調査報告書を作成しており、2016年と2017年の今回が3回目の調査報告です。
国土地理院の2万5千分の1地図を縦横に等分してサブメッシュを作成し、315サブメッシュでラインセンサスによる現地調査を実施して、過去2回の調査との比較をされました。
『山口県版鳥類繁殖分布調査報告書2017(種別解説編)』には、種ごとに山口県における生息状況やその変化、繁殖例などの非常に充実した記録がまとめられています。全国鳥類繁殖分布調査では収集されきれなかったと思われるデータも多く載っており、地域に密着して鳥を観察する人、その記録をまとめる人の距離の近さと層の厚さを感じました。
個別の種では、全国の傾向と同じくソウシチョウやガビチョウの分布拡大が見てとれました。山口県は西日本の中ではソウシチョウの拡大が遅く、ガビチョウもまだ遠い存在だったのですが、ついに入ってきて増えているようです。山口県出身の私としても、馴染んだ音環境が変わっていくのだろうかと心配になりながら読みました。
『山口野鳥 第52号』にはいろいろな鳥の報告などが載っていますが、特に山本尚佳さんの「生態写真の撮影にハマった!」や調査研究部による「続 頭かき図鑑」が面白くてご紹介します。
「生態写真の撮影にハマった!」は、野鳥観察から入って撮影も始められた山本さんが、警戒されない距離でじっくりと鳥を観察しながら、鳥が見せてくれるいろいろな行動を撮り溜めたものです。潮汐に合わせて「休息」のタイミングで撮影したものや、マガンとシジュウカラガンがいがみ合っている「異種間の争い」など、ゆっくりと鳥をみる面白さが詰め合わせになったような内容でした。
「続 頭かき図鑑」は、いろいろな鳥が頭をかいている写真がひたすら掲載されているページです。ここでは、普通に頭をかく「直接頭かき」と、翼越しに頭をかく「間接頭かき」について、どの分類群の鳥がどんなかき方をするかをまとめてあります。写真もたくさん掲載されていて、写真を見比べるだけでも楽しいものです。こうした記録は、山口県支部野鳥観察データベースに掲載されているものから抽出されたものだそうで、他にも色々な行動が掲載されているようです。こんなに充実したデータベースがあるのかと驚きました。