2020年07月27日
日本鳥類図譜(守屋)
2020年07月25日
モニタリングデータの個体数変化を分析する統計ソフトTRIM(rtrim)の使い方
長期に続くモニタリング調査では毎回全ての地点で調査ができない場合がありますが、TRIMはそうした欠損値を補完して個体数の変化傾向を有意水準付で判定してくれます。(PECBMSソフトウエアhttps://pecbms.info/methods/software/)。
TRIMは当初、Windowsアプリケーションとして公開されていましたが、その後、統計言語Rのパッケージ版になった「rtrim」が公開されました。rtrimはWindows版よりきれいなグラフが描けるし、Windows版で面倒だった欠損記録を「-1」で埋める事前準備が必要がない(例えば2000年の調査がなければ、2000年の行を消しておけばよい)など機能が高まっている反面、Rの知識が必要なので、取っつきにくくなったかもしれません。この記事ではrtrimでどのくらいデータの補間をできるかのテストと、簡単な使い方を紹介します。記事で使ったデータはタブ区切り形式のファイルでダウンロードできます。
TRIMは欠損データを推定できる
TRIMは、ある地点の個体数は地点の特性と調査した年(年に限らず日でも月でも)の特性に基づくと考えて推定を行います。「個体数が多い地点は毎年多いはずだし、全体の個体数が多い年はさらに多いだろう、だから今年この場所は調査してないけど、このくらいの個体数がいるはずだ」というような理屈で計算してくれているようです。では、TRIMがどのくらいデータの欠損を補完できるのかテストしてみましょう。
テストには「毎年一度の調査が行われていて、全地点で個体数が増加を続けている」という極端な仮想のデータを使用します。下図はTRIMが出力したグラフと、生データのグラフです。この場合はTRIMの推定値と生データは同じになります。[使用データ trimtest.txt]
つぎに、データから10%の記録を間引きました。生データはガタガタしますが、TRIMの推定値はあまり変化していません。[使用データ trimtest_10per_del.txt]
さらに、20%の記録を間引きしました。これでも、TRIMの推定はほとんど影響がありません。[使用データ trimtest_20per_del.txt]

なお、テストで間引いた生データのグラフはガタガタになりましたが、それでも近似直線を引けば個体数が増加傾向であることは分かりそうです。すべての調査地で数が増加するという極端なデータなので、多少間引きをしても全体傾向はそれほど分かりにくくならなかったようです。
実際のハクチョウ記録でテスト
モニタリング調査では、初めのころは調査地が少なかったのが、しだいに調査地が増えてくるということがよくあります。こういうケースで、例えば総個体数が増えている場合には、野鳥が増えたからなのか、それとも調査地が増えたからなのかが分かりにくくなってしまいます。
それをTRIMがどう計算してくれるのか、実際の宮城県のハクチョウのデータを使ってテストしました。環境省のガンカモ類の生息調査からある条件で調査地を抽出し、そこにいた「オオハクチョウ+コハクチョウ」の個体数変化をTRIMと生データで比較しています。
はじめに、欠損のないデータのグラフを下図の左列に示します。TRIMと生データのグラフは同じような形で、緩やかな減少傾向があるように見えます。[使用データ hakucho_original.txt]。つぎに、何カ所かの調査地で初期の頃の年の記録をバッサリ削除し、途中から新調査地が増えた状態を模したデータのグラフを右列に示します。右列下段の生データのグラフでは初期の頃の個体数が下がり、経年変化は実際とは逆に増加傾向に見えます。一方、右列上段のTRIM推定値グラフは欠損のないデータと変わらない傾向を示しています。[使用データ hakucho_shoki_sakujo.txt]
以上のように、TRIMは欠損データがあっても正確な個体数傾向を推定してくれることが分かりました。
rtrimの使い方
この記事で紹介したグラフは、統計言語Rを使って数行のプログラムで作成することができます。Rの基本操作は説明しませんが、いろんなホームページに載っていますので、そちらを参考にしてください。
library(rtrim) # rtrimパッケージの読込
library(readr) # read_delim関数を使うために必要
hakucho <- read_delim("hakucho_original.txt", delim="\t") # 上記の白鳥データを読み込みます。
trim.results <- trim(count ~ site + year, data = hakucho, model=2, changepoints="all", serialcor=TRUE, overdisp=TRUE) # trimを実行します [※]。
slope <- overall(trim.results) # slopeには傾き、増減判定、P値などが格納されます。
plot(slope) # グラフを描きます。
[※]
model:
overdisp:Overdispersion (過分散)。ポアソン分布からの逸脱の程度です。野鳥のカウントでは過分散は高くなる可能性があるので「TRUE」。
この記事ではrtrimパッケージの使い方を説明しましたが、旧Windows版TRIMの日本語解説とアプリケーションがこちらのページでダウンロードできます。解説資料では計算の仕組みやアウトプットの読み取り方を説明していて、その内容はrtrimになっても変わりありませんので、参考にしてください。
2009年10月のバードリサーチニュースにもTRIMの記事を掲載しています。
http://www.bird-research.jp/1_newsletter/index2009.html
2020年07月21日
カワウのフンからエサを解明するためのフン採取に行きました!(植村)

2020年07月18日
中央公園調査報告
2020年07月16日
手賀沼周辺で調査をしてきました(山崎・佐藤)
7月から8月にかけて、行政からの依頼で、千葉県内で鳥類調査を実施する事になりました。調査期間が短いので、早めに調査したかったのですが、ずっと天気がすぐれなかったので、多少、天気が悪くても、実施すべく、手賀沼へと向かいました。
手賀沼は千葉県にある湖沼で、探鳥地としても有名ですが、下手賀沼という手賀川で結ばれている小さな湖沼もあります。元々この一帯は全て手賀沼でしたが、一部を水田に改変したことにより、現在の形になったそうです。今回はこの一帯を調査してきました。
この日の天気は雨で長袖を着ていないと肌寒く、7月とは思えない気温でした。早朝、手賀沼は雨だけでなく、少し霧もかかっていました。更に、現在は新型コロナ対策でマスクを着用しながら調査しましたが、自分の息で双眼鏡のレンズが曇ってしまい、観察するのがより一層難しくなりました…
そんな状況でしたが、泳いでいるオオバンやカイツブリと飛んでいるツバメやコアジサシなどを記録することができました。また、公園の緑地ではハシボソガラスの若い個体を観察しました。巣立ったばかりなのか、まだ親に餌をねだっているようなそぶりをしていました。
手賀川と下手賀沼の周辺は田んぼになっており、ダイサギやアオサギが採餌をしていました。セッカやオオヨシキリのさえずりも聴こえてきます。この日はその他にもコブハクチョウやカルガモ、カワラヒワ、ヒバリ、セグロセキレイなど30種以上記録することができました。
雨が降っている日はこれまで調査も観察もしていませんでしたが、実際に調査をしてみるとたくさんの種を記録することができて意外でした。しかし、雨が降っていない日であれば、もっと活発に飛び回っている鳥を観察することができたのかもしれません。
今月、九州や中部地方が豪雨による大きな被害を受けたと聞いております。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。また、1日も早い復興と穏やかな日々が戻ってくることをお祈り申し上げます。