2020年06月20日
便利なアプリ「野外調査地図」で奥多摩の繁殖分布調査
2020年06月18日
調査担当のいない2コースを調査してきました。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
2020年06月17日
江戸川区の調査をしてきました(佐藤)
飛べる鳥と飛べない鳥はどこが違う? −クイナ科の形態を比較−
捕食者がいないと飛ばなくなる進化が起こる
鳥は飛ぶことでハワイ諸島やガラパゴス諸島など、一度も他の大陸とつながった事のない海洋島にも分布を拡げる事ができます。そういった島では哺乳類などの天敵がいない事が多く、飛べることによるメリットが小さくなり、飛ばなくなる進化が起きる事があります(Olson 1973、樋口1996)。日本で唯一飛べない鳥であるヤンバルクイナが属するクイナ科は全部で130種以上おり、そのうちの30種以上が飛べません(Gaspar et al. 2020)。飛べる種と飛べない種両方で構成されている分類群の中では、最も飛べない種が多い分類群です。
飛べないクイナ科は翼が短く、胸部の筋肉と骨も小さい
75種のクイナ科の体長や翼の長さ、胸骨の大きさなどを比較した結果、飛べない種は飛べる種より相対的に翼と胸骨が小さい事が分かりました(図1)(Gaspar et al. 2020)。飛べないクイナ科は飛べるクイナ科よりも翼や胸部の筋肉や骨が発達していないようです。また、ヤンバルクイナはクイナと比べると、体の大きさに対して翼は短く、胸部の筋肉量は小さいです(Kuroda 1993)。飛翔を可能にする筋肉や骨の維持にはエネルギーが必要であるため、孤島のような餌資源に乏しい脆弱な環境では、維持するのが大変です。維持のコストを減らして、孤島での生活に適応したと考えられています(樋口1996)。
図1.飛べるクイナと飛べないクイナの体重に対する翼の長さの比率(左)と体重に対する胸骨の厚さの比率(右)。データはGaspar et al.(2020)より。
初列風切羽の形は左右対称?
初列風切羽はどうなのでしょうか?飛べる鳥は初列風切羽が左右非対称で、飛べない鳥は左右対称に近い形をしていると言われており、クイナ科の中にもニュージーランドクイナやマメクロクイナはほぼ左右対称の形をしています (Feduccia&Tordoff 1979、McGowan 1989、樋口1996)。しかし初列風切羽が左右非対称の形をした飛べないクイナ科も9種以上います (wang et al. 2017)。なぜ、クイナは種によって異なるのでしょうか。筋肉や骨と違って、左右非対称の風切羽は必ずしも維持に多くのコストがかからないのかもしれません。その場合、飛べなくなっても形状は変化しない可能性があります。ニュージーランドクイナやマメクロクイナは左右対称になったのは、たまたまそのような進化が起きて現在に至っているのかもしれません。しかし、鳥全体で見たとき、飛べる鳥の方が飛べない鳥よりも左右非対称に比率は高い傾向にあるので(Speakman & Thomson 1994)、飛べないクイナは飛べるクイナと比べると左右非対称の形をしているものの、左右対称に近い形をしているのかもしれません。残念ながらクイナ科だけの比較で数十種以上のデータを用いた研究は見つかりませんでした。クイナ科同士で比較した場合どのような結果になるのでしょうか、気になるところです。
脚部は発達している
飛べないクイナ科は翼や胸部が小さい一方で、体重は重く、大腿骨と骨盤の幅は広い傾向にあるようです(Gaspar et al. 2020)。またヤンバルクイナの胸筋はクイナと比較して小さいと先ほど説明しましたが、脚部の筋肉量は胸部の5倍以上あります。クイナの場合ですと約1.2倍です。飛べなくなった分足を使うことが増え、これによって脚部の発達に影響を与えたと考察されています(Kuroda 1993)。
まとめ
今回は飛べないクイナ科は翼や胸部の筋肉と骨が小さく、飛べる種とは違うという事、初列風切羽は左右非対称の形をしている種も複数いて、飛べる種と似ている可能性がある事、脚部は非常に発達しているという事を紹介しました。翼や脚の大きさであれば外見からでもわかるかもしれません。もしヤンバルクイナなど飛べないクイナ科を観察できるチャンスがありましたらぜひ確認してみてください。
参考文献
Feduccia A & Tordoff RH (1979) Feathers of Archaeopteryx: Asymmetric vanes indicate aerodynamic function. Science 203:1021-1022.
Gaspar J, Gibb C G & Trewick A S (2020) Convergent morphological responses to loss of flight in rails (Aves: Rallidae). Ecology and Evolution. doi: 10.1002/ece3.6298
樋口広芳 (1996) 飛べない鳥の謎―鳥の生態と進化をめぐる15章 平凡社 278pp
McGowan C (1989) Feather structure in flightless birds and its bearing on the question of the origin of feathers. Journal of Zoology 218: 537 - 547
Nagahisa Kuroda 1993 Morpho-anatomy of the Okinawa Rail Rallus okinawae J. Yamashina Inst. Ornithol.25:12-27
Olson S L (1973) Evolution of the rails of the South Atlantic Islands (Aves: Rallidae). Smithsonian Contributions to Zoology 152: 53pp
Speakman JR, Thomson SC (1994) Flight capabilities of Archaeopteryx. Nature 370:514.
Wang X, Nudds L R, Palmer C & Dyke J D (2017) Primary feather vane asymmetry should not be used to predict the flight capabilities of feathered fossils. Science Bulletin 62 : 1227-1228
2020年06月15日
2020企画:東京23区の鳥類調査−23区に進出した4種の分布を明らかにします−中間報告(佐藤)
重複した場所もありましたが、全部112メッシュの結果が集まりました(図1)
一方、東側からの情報は少ないので、この地域ではまだ局所的で分布している程度なのかもしれません。