2020年05月18日

ホトトギスを初認 函南原生林でモニ1000調査

何となく目が覚めて,時計を見る。
まだ2時前だし,もうひと眠りできるな,と思って,再び眠りにつこうとしたとき,ホトトギスの声。今年のぼくの初認です。車の窓を少し開けて,ちょっと聞いて,また眠りにつきました。

朝3時半。起床して湯を沸かしていると,再びホトトギスの声。夢じゃなかった!

今日は函南原始林での調査です。宿はここ。

P5170700.JPG

家を出て,調査して,家に戻るまで,だれとも接触なしにすることができました。感染症対策ばっちりです。
本当なら,カツ丼食べてから帰るんですけどね。そんな日々が来ることを切に願います。


調査の方は,ほかの調査地がシカの影響で,藪がなくなり,ウグイスなど藪の鳥がいなくなっている中,ここでは藪が健在です。

P5180712.JPGP5180707.JPG

シカがいないのか,それともササの種が違って,強いのか,理由はわかりませんが。

ウグイスもたくさんいますが,多いのはこれ。

ソウシチョウです。でも,コルリも聞かれ,藪が健在で,藪の鳥が減っていないのは心強いです。

最後に巨木にお参りして,今年の調査の安全と,カツ丼を食べられる日が戻ることを祈って帰ってきました。

P5180713.JPG



posted by ばーりさ at 15:56| 活動報告

2020年05月16日

コノハズクの声響く夜 モニ1000秩父調査

「ブッキョン ブッキョン」コノハズクの声が聞こえます。
秩父山地の夜。人がいるところから2時間程度は山に入ったところ。もちろん,いるのは,ぼくただ一人
コロナ対策ももちろんですが,昨秋の台風で林道が崩落して,車でアクセスできなくなってしまったため,前日入りの山中泊となりました。

初日の宿泊地は東大の研究用コンテナ。
97357750_3000342553380041_6271358589596598272_o.jpg

そして2日目はテント。
96683213_3000343156713314_4371990679685955584_o.jpg

(ちょっと寒いけど)コノハズクの声を聴きながら贅沢に寝れるのは,役得ですね。

鳥の方は,夏鳥がまだ不活発な気がしました。先日もブログで聞き取り調査の報告を書きましたが,4月になって寒くなったのが影響しているのかもしれないですね。


鳥の声もちょっと録音。センダイムシクイです。


鳴き声図鑑の音源が初期のころに録音した音源で,音が悪いと指摘を受けていたので,これをアップしました。これなら十分でしょ?

来週は天気が悪そうなので,明日明後日で別の調査地に調査に行くつもりです。感染すこし落ち着いてきていますが,今回も欲望をぐっとこらえて,「わらじカツ丼」を食べずに帰ってきました。明日からも,家から調査地直行/車中泊/自炊で,だれにも会わず,感染も感染拡大もしないように注意していってきます。
posted by ばーりさ at 21:57| 活動報告

2020年05月09日

今年のさえずりは,前半型の種は早く,後半型の種は遅め

秩父,富士山中湖,志賀高原そして富良野。Cyberforestが配信しているライブ音を聞きながら鳥のさえずり時期をモニタリングする調査も今年で10年となりました。

この結果をまとめると,今年のさえずりは,前半型の種は早かったけれども,後半型の種は遅めだということが見えてきました。

さえずり頻度.png

たとえばゴジュウカラ,カワラヒワ,キバシリといった種は,調査を開始する4月上旬か,それより前にさえずりのピークがある前半型のさえずりの種です。こうした種について見ると,例年よりも早い時期にさえずりが不活発になっており,今年のさえずりは早かったことが推測されます。それに対して,漂鳥や夏鳥といったこれからさえずりのピークが来る種については,例年より遅めのようです。

今年は春先は暖かでしたが,4月になってから寒い日が続きました。このような気候がこうしたパターンをもたらしたのかもしれません。去年も同じような気候で,そして鳥たちのパターンも同じだったことも,この可能性を支持します。

引き続き,鳥たちのさえずりをモニタリングし,気候変動が鳥たちにどのような影響を与えるのか見ていきたいと思います。


posted by ばーりさ at 15:35| 活動報告

2020年05月05日

今年のツバメは,西はやや早く,東はかなり早かった

5月になりました。
季節前線ウォッチのツバメの初認情報も落ち着きましたので,ここまでの情報をまとめてみました。
まずは全国集計の過去からの変遷。

ツバメ全国.png

一番下が今年の記録です。去年とパターンは似ていますが,3月下旬には,すでにピークを越えており,今年の渡来は早々に済んでしまい,去年よりも早かったことがわかります。2009年,2013年も初認が早かったのですが,2009年とならび,これまでで一番渡来の早かった年と言えそうです。

このことは地方別の渡来状況でもうかがえます。

ツバメ2016-20比較.png

同様に,一番下に今年の記録が示されていますが,渡来が始まる西日本では,やや早い程度ですが,その後に渡来する東日本ではいずれも渡来が早いことがわかります。東日本が早かったため,渡来が終わるのが早かったのでしょう。

ただ,ツバメの渡来が一段落した4月になってから寒くなったためか,山の鳥のさえずりは意外と活発になるのが遅い傾向もみられています。

渡来時期は早かったけど,繁殖時期がどうなのかなどについても気にしてみようと思います。

これから,カッコウ類などの渡来が本格化する時期です。引き続き季節前線ウォッチへご協力ください。


posted by ばーりさ at 16:48| 活動報告

2020年05月01日

森林性度合いの違いと東京での分布拡大タイミングの関係

昨日公開したコジュケイについてのニュースレターの記事でも少し紹介しましたが,東京都では樹林性の鳥が増加し,分布を拡大しています(植田・佐藤 2018)。
ただ,それらの種の中でも,コゲラのように増加速度の鈍ったものも,メジロのように徐々に増加しているもの,そして,ヤマガラやアオゲラのように近年急激に増加しているものなど,パターンが違うことがわかっています。

図1.png
図1 各種鳥類の1970年代からの分布拡大の状況

 パッと見,より森林性の高いものが最近になって増加しているように見えますが,実際のところはどうなんでしょうか? そこで,各種の森林性の高さの指標として生息している緑地の面積を使い,検討してみました。

 ぼくは,春のあいだは毎朝,ツミを探して,国分寺から府中にかけての緑地を巡っています。そしてツミだけでなく,観察できた鳥を バードリサーチの野鳥記録データベース「フィールドノート」に登録しています。今回はその記録を抽出して各種鳥類の生息の有無とその緑地の面積(Googleマップで計算)について,ロジスティクス回帰で検討してみました。それが図2です。当てはまりのよい種とそうでない種がいますね。

図2.png
図2 各種鳥類の出現の有無と森林面積のロジスティック回帰

 あてはまりの悪い種の1つがアオゲラです。大きな樹林をもつ緑地にはだいたいいるのですが,いない緑地があったり,逆にずいぶん小さな樹林面積でもいる緑地があります。これはアオゲラの行動圏が広いことに起因していそうです。行動圏が広いので,樹林1つに行動圏が完結していなく,近くに樹林があれば,小さな樹林も利用しているのでこのような結果になったのかもしれません。解析対象は樹林面積よりも,その地域の樹林の総面積とかの方が良かったのかもしれません。また行動圏が広いので,逆にいてもたまたま出会わないなんてこともあり得て,大きな緑地でも確認できなかったところがあるのかもしれません。
 もう1つあてはまりの悪かったのがガビチョウです。大きな樹林2か所で生息していなかったため,あてはまりが悪くなりました。この2か所の緑地は調査地の北側のJR中央線より北側の調査地でした。ガビチョウはご存知の通り外来種で,現在絶賛分布拡大中の種です。この地域では調査地より南側を流れる多摩川の河畔林から分布を拡大させています。そのため,まだ,調査地の北側まで分布拡大の流れが達していないのではないかと思われます。

 こうした問題もあるのですが,このロジスティック回帰を使って,各種鳥類の生息確率が50%(図の青線)を超える樹林面積と近年の増加度合との関係を見てみました。

図3.png
図3 最近の増加度合と,森林鳥類指標との関係


 1点(エナガ)を除きいい感じに樹林性の高い種ほど,最近になって分布を拡大させているという傾向が見られました。エナガは群れ生活をする種です。オナガもそうですが,群れ生活をする種は,単独のようにポンポンポンと分布を拡大させず,じわじわ広がっていく傾向があります。そのため,樹林性がそれほど高くないにもかかわらず,近年になって分布を拡大したという結果になったのかもしれません。

 今回,東京都繁殖分布調査の結果でこうした結果が見られましたので,全国繁殖分布調査の結果ではどうか,あるいはほかの都市では,どうなのかについて気にしながら見ていきたいと思います。

posted by ばーりさ at 14:40| 活動報告