2019年01月14日

北印旛沼でカモのドローンカウント実験

バードリサーチのニュースサイトでお伝えしているように、ハクチョウ給餌場で2008/09年越冬期ごろから給餌自粛が広まったために、ハクチョウと一緒に餌をもらっていたオナガガモが東北を離れ、茨城・千葉に集中するようになりました。そこで、この地域でオナガガモがどこに何羽いるのか、今後の増減はどうなのかをモニタリングしておく必要があると考えています。

給餌自粛によるオナガガモの分布変化−続報
 http://db3.bird-research.jp/news/201812-no4/

こちらは3月に佐藤君が書いた第一報です。
オナガガモの分布変化
 https://db3.bird-research.jp/news/201803-no3/

千葉県の北印旛沼は最大級の越冬地で、環境省のガンカモ一斉調査では近年1〜2万羽ほどが越冬しているようです。ただ、これほどの数になると目視で数えることが難しいため、ドローンを使って空撮した写真で継続的にモニタリングできないかと思って、1月11日に実験をしてきました。北印旛沼では地元で野鳥調査を続けている皆さんに案内していただきました。ありがとうございます。

さて、これまでもブログやニュースサイトでお伝えしているように、ドローンを使ってハクチョウやツルのような大型の鳥をカウントすることはできそうなのですが、ガン類とカモ類ではあまりうまくできていません。そうした課題を説明しつつ、北印旛沼で撮った写真をご紹介しましょう。

はじめにお断りしておくと、この日は強風で、少しドローンを飛ばして写真を撮りましたが、カウント調査ができるほど長くは飛行させることができませんでした。そして肝心のオナガガモは、撮影することができなかったのでした:-)

今回の空撮カウントで試したのは、まず手動でドローンを飛ばして群れの位置を確認し、次に群れがいる範囲に自動操縦を設定して水面を網羅的に撮影するという方法です。バードリサーチで使っているPhantom4 Proというドローンでは、色の地味なカモのメスを識別するには高度を20mまで下げねばならず、高度100m以上でもカウントできるハクチョウ類に比べて一定時間に撮影できる面積が格段に小さくなります。下図が今回設定した飛行範囲ですが、この200x400m区画の撮影に30分ほどかかります。
GSPro.PNG


そして運の悪いことに(しかし、よくありそうなことですが)、自動操縦をセットしている間にカモの群れが移動してしまったので、撮れた写真にほとんどカモが写っていませんでした。これはカモが写っていた写真ですが、マガモとトモエガモがいることが分かります。右上のトモエガモは顔の模様が見えます。
自動航行オナガとトモエ.jpg

こちらは別の場所で撮影したオナガガモ。高度20mでこんなふうに見えます。
出水オナガ.jpg

下の写真は北印旛沼北岸の長門川河口近くにいたトモエガモの群れです。この写真からは種を識別できませんが、望遠鏡で確認しています。
長門川河口とトモエ.jpg

オナガガモが少数混ざっているのですが、それは考えずに自動カウントしてみると、写真の左半分のカモが比較的大きく写っている部分で約1400羽。右半分は不鮮明で自動カウントできませんでしたが、左半分より多くいそうなので、3000羽+といったところでしょうか。ImageJというフリーウエアを使って、カウントできたカモに黄色いマークが付いています。
自動カウント.jpg

カモのドローン調査が難しい理由のひとつは、現在のドローンではカメラ性能が低いため低い高度で撮影することになり、すると写真1枚に納まる面積が狭いので、撮影に時間がかかってしまうことです。もちろん高性能なカメラを使えるドローンもありますが、一般的な機種で調査できることが実験の目的です。それから、広い湖沼で群れ全体を撮影できるように自動操縦で飛ぶエリアを設定するのも、なかなか上手にできません。

それで今回のオチですが、カモは強い北風を避けて沼の北岸近くに固まっていて、ドローンを使わずとも岸から目視調査できそうでした。冬は天気の悪い日が多く、ドローンは雨風に弱いのです。いまのところ、ドローンが役に立つのは望遠鏡などでは見えない距離や物陰にいる群れを数える場合で、鳥が見えているのなら、どんな状況でも調査できる目視調査の方が確実です。


【詳しい説明】
ガンカモ調査にドローンを導入している調査地の皆さんの参考にしてもらえるよう、詳しい説明を書いておきます。
  • カメラは露出オートで撮影していますが、露出補正なしで撮影すると暗い水面に露出が合うので水鳥は白っぽく写ります。湖沼によって水面の色合いが違うので、その場所に合った露出補正(マイナス1〜2程度)が必要です。
  • ピントもオートにしていますが、マニュアルで無限遠にセットしておく方法もあります。どちらがきれいに写るか、今後テストします。
  • 自動操縦アプリ「GS Pro」でホバリング停止させながら撮影していますが、10枚に1枚くらい撮影漏れが起きます。別の自動操縦アプリ「Litchi」でも同じことが起きるので、Phantom側の問題かと思います。原因の分かる方がいたら、お教え下さい。
  • 水面の撮影は目標物がないので、隣り合う写真をうまくつなげません。ドローンで撮影した写真には中央の緯度経度が保存されているので、それを頼りに写真をGISで並べてカウントをします。ドローンの写真をGISで利用するためには、画像処理ソフトで写真の歪みを取ってきれいに合成する方法がありますが(オルソ化)、水面では使えません。
  • 写真は中心から外側に行くに従って実際の距離より長く写ります。しかし、同率で伸ばされた部分同士が重なるので、面積は正しくないものの写っている範囲はだいたい正確です。主な誤差としては、GPSの緯経度のずれが数メートルと、ドローンが揺れてカメラが真下を向いてない場合にいくらかのずれが生じます。下記は北印旛沼で高度20mで撮影した隣り合う写真をGISで並べたもので、数メートルずれています。高度20mでの画角は30x20mなので1割程度の誤差になります。高度が高くなって写真の画角が大きくなれば数メートルのずれは大した問題になりませんが、その場合はカメラが真下に向いてない場合のズレの問題が大きくなるでしょう。
写真のズレ.JPG
posted by ばーりさ at 10:34| 活動報告