2017年08月23日

爺ヶ岳登頂_8月後半なるもさえずり続ける鳥のなぞ(高木)

先週、録音機を設置してもらっている北アルプスの種池山荘へ行ってきました。昨年は天候の悪化が予想されたので急遽宿泊せずに日帰りで下山しましたが、今年は一泊させてもらい、爺ヶ岳の山頂を目指しました。と言っても、標高2450mの山荘から標高2669mの爺ヶ岳までは1時間少々。あとは、山荘でゆっくりさせてもらいました。山荘の休憩室で見つけた本のタイトルが「40歳からの山歩き」。そして帯には「熟年世代の入門コース精選60!」の文字・・・。今年、僕も40才。そうか、もう熟年なのか、と妙に神妙になりました。
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 気をとりなおして(?)、鳥の話をしましょう。春も過ぎて夏になると森林の鳥たちのさえずりは不活発になりますが、8月後半だというのにウグイスとメボソムシクイは活発にさえずっていました。さすがにルリビタキは下火で、うじゃうじゃいるはずの標高2000mより上でも彼らのさえずりはちらほら、やや遠くから聞こえるだけ。むしろウソのほうが多いぐらいで、鳴く頻度も高いようでした。ウソの生態をあまりよく知らないのですが、麓で元気だったカラ類の家族群のように、子連れの時期にコミュニケーションを活発にとるのでしょうか?
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爺ヶ岳に南から登る柏原新道では、7〜8月の夏期は標高2100mあたりが一番鳥が多い。個体数も種数も。針葉樹に広葉樹、低木、ササ薮がほどよく混ざっているからなのか。

 さて、ウグイスです。まあ、よく鳴いていました。なんでこんなにいつまでも鳴いているのか、と今更ながら思いました。この疑問に対する答えは、妙高高原で濱尾さんが行われた研究で明らかにされています(濱尾 1992)。ウグイスは一夫多妻の婚姻システムを持っているので、オスはさえずり続けることで、より多くのメスとつがいになろうとしているのです。では、ウグイスでは、オスよりメスの方が多いのか、というとそうではありません。巣内ヒナの性比がメスに偏っている、ということはないようなのです。ウグイスでは、巣の卵やヒナが天敵に捕食される頻度が高く、一度つがいになったメスが繁殖に失敗した後、別のオスとつがいになるため、雌雄同数でも一夫多妻が維持される、というわけです。
 では、メボソムシクイはどうでしょう?ウグイスは一夫多妻でオスは育雛を免除されていますが、メボソムシクイは一夫一妻でオスはヒナへの給餌を手伝います。おや?どうも同じ論理で片づける、というわけにはいかないようです。ですが、捕食圧は高いようでヘビ類のほかテンによる捕食も確認されています(齋藤 2011)。繁殖失敗を繰り返すために、遅くまでさえずらなくてはならないのかもしれません(捕食圧の高い鳥はほかにもいっぱいいるので、寿命が短いとか、季節の後半でも餌条件が変わらないとか、ほかにいくつかの要因が絡んでいるのだとは思いますが。)。
 ウグイスやメボソムシクイはなかなか姿を見ることができませんが、テンやオコジョも滅多に出会えません。僕らの目の行き届かない薮の中で、彼らの生存をかけた激しい戦いが静かに繰り広げられている。もし、メボソムシクイが夏にさえずらなくなったとしたら、それは、捕食者の絶滅の危機を知らせるサインかもしれません。こう考えるのは、憶測が過ぎるでしょうか(笑)。
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薮の奥ではどんなドラマが展開されているのでしょう?

DATA
今年は、だいぶ低い標高でメボソムシクイを確認。登山口に近い1530mでさえずっていた。その他、いくつかの種の出現標高の下限は下記の通り。(さえずりの確認には時期が遅いので、あくまで参考まで)
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2120m ホシガラス、ウソ
1800m ルリビタキ
1530m メボソムシクイ(1羽のみ、ほかは1800m以上)
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引用文献
濱尾章二.1992.番い関係の希薄なウグイスの一夫多妻について.日鳥学誌 40: 51-66.
齋藤武馬.2011.生態図鑑メボソムシクイ.バードリサーチニュース 2011年11月号: 2-3.
posted by ばーりさ at 16:31| 活動報告